2.薬に関して困ったこと(飲みにくいなど)や相談事を書いておこう
子どもが飲みにくそうにしていた薬や、薬で困ったこと、薬を服用することによって表れた気になった症状なども手帳にメモしておきましょう。
たとえば、細菌による感染症や咳の症状がひどい場合によく処方される『クラリスドライシロップ』ですが、味が苦手で飲めないお子さんは少なくありません。
そして、この薬に関しては、スポーツドリンクやヨーグルト、ジュースと一緒に飲んだ場合、苦みが倍増してしまいます。一方、バニラアイスなどに混ぜた場合は、飲みやすくなります。
薬剤師は、薬の苦みが増すNGな与え方も、薬が飲みやすくなる与え方も両方知っているので、的確なアドバイスをもらうことができます。
その他、錠剤が苦手なお子さんで、飲ませるたびに苦労する・吐き出してしまうといった場合、薬剤師に伝えておくと、粉薬にしてくれることもあります。
3. 最新部はスマホに残しておこう
今は、いつ・どこで自然災害が起きるか分かりません。なので、お薬手帳の最新部は常にスマホカメラで撮って保存しておいてほしいと思います。
避難などが必要になり、服用中の薬を置いてきてしまった場合、最新部の情報で素早く適切な薬を受け取ることができます。
これは、とても大切なことなので、お子さんに限った話だけではなく、ご家族全員分用意しておいてほしいと思います。
災害時に限った話ではなく、乳幼児が大人の薬を誤飲してしまったときなど、家族分のお薬手帳の情報があれば、診察や治療に役立ちます。
また、「しばらく病院にも薬局にも行っていない」という場合も、それは『健康である』ということを証明するひとつの重要な情報です。
最近は、『お薬手帳の電子化』も進んでいます。スマートフォンにアプリを入れて、そこで薬の情報をすべて管理できます。これなら、いちいち写真に撮って保存しておく必要はありません。このようなスマホアプリのお薬手帳に切り替えるのも、ひとつの手だと思います。
お薬手帳+“薬剤師”の活用を!
水さんは、お薬手帳はもちろん、「患者さんは薬剤師をもっと活用していい」とおっしゃっています。
水さん「今はネットで手軽にいろんな情報が得られます。子どもの薬に関しても、ネットで検索して調べているママは多いでしょう。しかし、ネットの情報は、誰でも書き込めるので、信頼性や正確性に欠けます。
安易にママ友から聞いたり、ネットで調べた情報を鵜呑みにするのではなく、薬のことは薬剤師に尋ねてほしい。
薬局が混んでいるときなどは質問しにくいかもしれませんが、そんなときは「空いている時間に電話してもいいですか?」と伝えておいて、後ほど電話すれば、快く対応してくれるでしょう。
また、薬剤師も人間ですから、「合う・合わない」という相性や、「気が利く・気が利かない」という個人差もあります。
「この人は信頼できる」「この人とはコミュニケーションがとりやすい」という薬剤師をひとり見つけておいて、そこに通うようにすると、お子さんの身体のことをよく分かってくれるようになりますし、薬や健康に関するいろんな情報を教えてくれるようになります。
子どもの“かかりつけ医”とともに、“かかりつけ薬剤師”は、ぜひ見つけておいてほしいと思います。」
*
「なんとなくお薬手帳を持っていた」「お薬手帳の存在を忘れがちだった」…というママは、今回の水さんのお話で、お薬手帳のメリットと活用法を知ることができたのではないでしょうか。
お薬手帳は、薬剤師さんとのコミュニケーションをスムーズにし、密にするツールにもなります。
どんどん活用し、“かかりつけ薬剤師”を見つけるきっかけ作りにもしていきたいですね。
【取材協力】水 八寿裕(みず やすひろ)
株式会社実務薬学総合研究所 教育事業部部長
ふくろうメディカル(個人事業主)代表
東京理科大薬学部臨床准教授
1993年、東京理科大学薬学部製薬学科卒業。同年薬剤師資格取得
1995年、同大学院修士修了(有機合成化学)
2011年の東日本大震災発災時に自身の故郷の福島を中心に医療支援を行いともに活動した医療者から「医療の原点」について強い感銘を受けた。製薬MR(医薬情報担当者)出身という視点を生かした薬剤師のありかたを模索している。