「人に迷惑をかけない子に育てる」とても立派な子育て方針に一見、聞こえますが「人に迷惑をかけないで生きる」なんてことが実際出来るのでしょうか?そして、この子育て方針は?
『発達障害に生まれて』のモデルとなった筆者がお話します。
ハッとさせられる言葉
「これまで“人に迷惑をかけないで生きる”ことが、唯一のポリシーでしたが、それが大きく揺らいだ。果たしてそれがそんなに大事なことなのか、と。
自分一人ではできないことなら人に助けてもらえばいいのではと。人に頼ることを恐れすぎてはいけないとも思うようになりました。何より僕の娘には、人を助けてあげられる人になってほしいと思うようになりましたね」
これは『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』で主演した俳優、大泉 洋さんの言葉です。
少年時代に難病の筋ジストロフィーを患った実在の人物・鹿野靖明さんを演じました。
人に迷惑をかけない子育て方針
筆者は子育て中の若い親御さんと接する機会が多いのですが、「どんな風にお子さんが育ってほしいですか?」と質問すると、結構な割合で「人に迷惑をかけない子になってほしい」「どこへ出しても恥ずかしくない子に育ってほしい」の答えが返ってきます。
でも、よくよく考えてみると…これらって、裏を返せば軸が他人にある“他人目線”です。他人からどう評価されるかが最優先のように聞こえます。
人に迷惑をかけない子どもなんて、この世に存在しません。子どもは、自己中心的でわがままで人に迷惑をかけながら生きていくからです。
この本質を無視して親の方針が過度になると、子どもが生きづらくなります。
計算できなくても、買い物できます
筆者は18歳の知的障害がある自閉症の息子を育てています。
中学生になってから「一人で買い物ができるように、お金の計算をマスターさせよう」と躍起になっていました。
そんなとき、特別支援学級の担任の先生の言葉にビジッと次の言葉を言われました。
- 大事なのは「自分から助けを求められること」。なんでも自分一人の力で出来るようにならなくてもいい。
- どんなに努力しても難しいこともある。出来ないことをすべて克服させようとしなくてもよい。
- 日本は治安が良い国。お金の計算が出来なくても大丈夫。財布を広げて「わからないので取ってください」と言えば、店の人が助けてくれる。
「出来る人に頼ることも自立の形だ」と先生は言いました。目から鱗が落ちました!
息子は18歳になっても計算ができませんが一人で買い物、切符の購入、外食もすることも出来ます。なぜそれが出来るのかと言うと…「僕は計算が出来ないので、このお財布から取って下さい」とお店の人にお願いしているからです。
障害のある子の親亡き後のことを考えると、誰かにSOSを出す練習をさせたいと考えていますので、これを続けさせています。