「~しようね」ではなく「どうかな?」と言葉をかける
まだまだ「いい大学」「いい会社」に入れば安心、といった思想が根強いかもしれませんが、今後はどんどん「個人の力」が求められていく時代。現代を生きる子どもたちに必要なのは、本書でも一貫して述べられている「自主性」や「コミュ力」です。
そのためには、どんなことがあっても安心できる心の基地と、失敗しても折れない心(自己肯定感)が大切。
その2つが備わった人間に育つためには、「~しようね」ではなく「どうかな?」という言葉がけが最適だそう。
水橋さんが驚いた光景があります。日本の小学生たちと一緒にフィンランドの小学校を訪問し、生徒合わせて50人くらいで森へ行って、学校に戻ってきたときのことです。日本なら点呼をとって人数を確認しますが、フィンランドではなんと確認しないというのです。
その理由は、生徒たちは森には危険があることも納得していて、どうして大人と一緒に帰ってこなければならないのか、自分たちで考えてよくわかっているから。
日本の学校では、先生から言われたことをただ守るのが当然で、もし何か起これば「どうして先生の言うことを守らないのか」と叱られるのが普通です。
子どもが自分で考えて理解することよりも、大人の言うとおりにすることが求められてしまっているんですね。
これからは、子どもの自主性やコミュ力、そして自己肯定感を育てるために、「~しようね」と押し付けるのではなく、「どうかな?」と相手の意思を尊重してみましょう。
宿題がはかどらない子どもにはこの一言
水橋さんが「子育て講座」で出会った親子のエピソードです。
小学4年生の男の子は、早く宿題を済ませてほしい母親の期待に応えようとして、学校から帰ると大好きな工作を後回しにして宿題を先に済ませる頑張り屋。
でも、その宿題にとても時間がかかってしまって、母親はついイライラしてしまうということでした。
どうしていいかわからなかった母親ですが、「子育て講座」で、子どもの成長によっていろいろなパターンがあっていいと学び、「先に思いきり遊んでから宿題するといいみたいよ」と声をかけたそうです。
すると、男の子は先に工作を楽しんでから宿題に取り掛かり、とてもスムーズにできるようになったのだとか。
母親はそれまで、先に宿題を終わらせてから遊んだほうがいいと思い込んでいました。母親が大好きな男の子も頑張ってはいましたが、納得して取り組んでいたわけではなかったので、時間がかかってしまったのですね。
これでは、自主性も自己肯定感も育たず、母親と上手に対話もできていないのでコミュ力も育ちません。
まずは母親が宿題をやる方法について「こうやって宿題をするのって、どうかな?」と提案してみてください。その上で、先にやったほうがいいと思うならその理由を、子どもが納得できるまで話してあげてください。
子どもが納得していないなら「対話」を促し、双方が納得する形で宿題ができれば、自主性や自己肯定感も高まっていくでしょう。
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これからの子どもに必要なコミュニケーション力は、小さいうちの親子の「対話」によって磨かれていくのですね。『将来の学力・コミュ力は10歳までの「言葉かけ」で決まる――フィンランド式子育て』には、他にもさまざまなシーンにおける言葉かけが紹介されています。ぜひ参考にしてみてくださいね。