紙の広報紙は要らない
それでは、本多聞中学校で実際に行われたPTA改革の一例をご紹介します。
今どきはウェブの広報紙が、メインなのかと思いきや、まだまだ印刷所に持ち込んで作成する紙の広報紙が多いようです。
本多聞中学校では、 従来だと7月と2月に広報紙を発行していましたが、 アンケートでは、「作成にかなりの労力がかかり、 一番敬遠されている」「学校関係者以外、誰が読むのか」「 印刷業者に出して作るため、費用が年間30万円もかかる」「 そもそも学校のホームページがあるのに」と批判的な意見が相次ぎました。
とはいえ、先生たちの人となりがわかるなど、コミュニケーションの助けとなるという利点を推す声もなくはなかったそうです。
そこで、出された折衷案は、 先生紹介の記事のみの手作りの広報紙を1学期の早い時期に作り、その年から広報紙の発行は1年に1回にとどめ、代わりにタイムリーな話題をつどホームページで発信することにし たそうです。
制作費は浮くわ、ホームページにしたことで逆に発信量は増えるわ、大成功だったようです。また、7月でなく1学期の早い時期に先生紹介の記事が読めたことも好評だったとか。
PTAの役割
他にも、誰のためのものなのか謎な研修や、専門委員会も廃止に、さらには教員との懇親会も、思い切って廃止したそうです。それに伴い、ワーキングマザーを悩ませていた平日の集まりはぐんと減りました。
そのまま、もうPTAなんていらない、といった空気になっていったのかと思いきや、意外なことに、毎月1回開催される運営委員会は、回を重ねるごとに参加者がふえていったというのです。
改革と通じて、保護者と学校側の間に、お互いに腹を割っても大丈夫という雰囲気ができていたのでしょう。
運営委員会は、管理職の先生と保護者との筋書きなしの意見交換の場であり、日頃、誰に言おうか悩んでいるようなことをシェアするのに最適だったようです。
もしPTAがなくなれば、子どものことで何かあったとき、 保護者が直接学校側に連絡することになります。 学校側は保護者の要求に丁寧な対応を迫られ、さらに多忙化に拍車がかかるのではないでしょうか。
他にも、PTAがあったから、地域の方とも仲良くなれた、引っ越してきたばかりの人には知り合いをつくるいい機会、といった声もありました。
PTAはこうして活用する
PTAについて、必要か不要かで話し合っても、意見が対立するだけで、結局価値観の違いが露呈されるだけだと今関さんは言います。
それよりも、PTAをうまく改革して「学校を楽しくする」 チャンスをとらえよう、というのが本書の意図です。
もはや、PTAの見直しは、時代の流れから避けられるものではないでしょう。今関さん、福本校長たちのケースのように、保護者のPTAのイメージが子どもを育てる上の仲間に変われば、しめたものです。
長い子育ての時間のなか、PTAに関わることがあったら、ぜひ本書の一読をオススメします。 初めの一歩を踏み出すのは勇気がいりますが、改革を必要としているのは時代の流れです。
本書の内容を、何人かで共有してもいいかもしれませんね。