細かく刻んだ鰻の蒲焼を、お櫃ご飯の上にまぶした「ひつまぶし」。かつては「ひまつぶし」と読み違える人もいたというが、今は行列覚悟の人気メニューだ。
起源は諸説あるが、あつた蓬莱軒では、明治時代、出前の際に丼が割れるのを避けるため、数人分まとめて一つのお櫃に入れ、うなぎを均等に分けやすいよう細かく刻んでまぶすようになったという。
名古屋の鰻は、関西と同様に腹から割き、長いまま金串にさして蒸さずに焼く地焼き。身はふんわり適度な弾力があり、皮はカリッと焼ける地焼き。だからこそ、細かく刻んでも崩れない。
今日では、一膳めはそのまま、二膳めは薬味のみ、三膳めはお茶漬けという食べ方が基本形として定着している。むろん、好みの食べ方だけで食べても構わない。
ぴあMOOK『原寸大なごやめし図鑑100』から、絶品「ひつまぶし」の名店をご紹介!
さらりと〆る老舗のまぶし
いば昇 櫃まぶし 2800円
たれが小瓶でつくので好みの濃さに調整できる。
創業100年以上、三代目が鰻を細かく切った、現在のひつまぶしを考案したと言われている。現在は五代目店主の木村さんが暖簾を守る老舗店。
名物の櫃まぶしの鰻は、備長炭でじっくり焼き上げて余分な脂を落として皮はパリパリ、中はふっくら。海苔を敷いたご飯の上に、たっぷりの鰻を載せる。2人前以上は、人数分を大きなひとつのお櫃に盛るのが本来の食べ方だとか。最後にはさっぱりとした口当たりの煎茶の茶漬けでサラサラといただく。
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丼(並2050円、上3000円、吸い物つきは+200円)、長膳※吸い物と漬物つき(並2700円、上3650円)
いば昇
052-951-1166
名古屋市中区錦3-13-22
11:00〜14:30(LO)、16:00〜20:00(LO)
定休 日曜、第2・3月曜
68席(テーブル32席、座敷36席)
禁煙
駐車場 無し
地下鉄東山線・名城線栄駅1出口より徒歩3分
計算され尽くした至高の芸術品
鰻 木屋 上おひつまぶし(肝吸付) 3450円
濃い口のタレで、お茶漬けにしても存在感のある食べ応え。
「鰻屋にとって活きの良い鰻を使うことは命」という五代目店主の言葉のとおり、地下42mから汲み上げた井戸水で泳がせる鰻を使う。これを最良の火加減で焼けるように計算して備長炭の火をおこすという。
お米も試行を重ねて良米を仕入れ、常に炊きたてを出せるようこまめに炊きあげる。コク深い甘辛タレは毎日昼から夜まで手間をかけて仕上げ、数日間寝かせてなじませるという妥協のなさ。まさに細部まで究めた芸術品のようなひつまぶし。
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おひつまぶし(吸付)2850円、鰻丼松(吸付)2000円、上鰻丼(吸付)2450円、特選鰻丼(肝吸付)2900円
鰻 木屋
052-951-8781
名古屋市東区東外堀町11
11:00〜13:30、17:30〜18:30(夜は要予約)
定休 日曜、祝日(夜は不定休)
72席(テーブル46席、個室3室)
禁煙
駐車場 7台
地下鉄名城線市役所駅2出口より徒歩5分
これが元祖の「ひつまぶし」
あつた蓬莱軒 本店 ひつまぶし 3600円
細めに切り分けて美しく詰められた鰻に、割烹料理店の品格を感じる。
明治6(1873)年、熱田神宮境内東門に創業した割烹料理店。明治末頃に誕生した登録商標のひつまぶしは、天下一品。創業以来継ぎ足しているタレは、戦中は疎開させてまで守り抜いた秘伝中の秘伝。濃厚ながらキレがよく、茶漬けにしてもさっぱり食べられる。
鰻は井戸水の中で3日間絶食させ余分な脂を抜いたものを熟練の職人が手早くさばき、備長炭でじっくりパリッと焼き上げる。大切な記念日などに味わいたいひつまぶしだ。
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鰻丼2400円、上鰻丼2900円、うまき定食2800円、鰻肝焼き950円、うなぎ会席(昼10692円、夜15444円〜税・サ込 ※前日までに要予約)
あつた蓬莱軒 本店
052-671-8686
名古屋市熱田区神戸町503
11:30〜14:00(LO)、16:30〜20:30(LO)
定休 水曜、4月1日より第2・4木曜も休み (祝日の場合は営業)
180席(個室10室)
分煙
駐車場 40台
地下鉄名城線伝馬町駅4出口より徒歩7分
ここでも食べられる
名古屋市内に神宮店、松坂屋店、松坂屋地下店(テイクアウト専門)3店