4:皆のヒーロー、ウルトラマンをバラバラに! "雪女怪獣"スノーゴン
ウルトラ戦士たちを打ち負かし、時に、死に追いやった歴代の強敵怪獣たち。そこからの復活劇こそが大きなドラマなわけですが、メインの視聴者である子どもにとっては、やはりヒーローが負ける姿というのは、相当にショックなものです。
しかも、そのやられ方というのが、視覚的にインパクトの強いものであれば、衝撃はより大きなものとなります。
『帰ってきたウルトラマン』に登場したスノーゴンは、ヒーローであるウルトラマンの身体をバラバラにするという前代未聞の悪行をしでかし、その異色の戦績から今もファンに記憶されている怪獣です。
あらゆるものを瞬時に凍らせる冷気を武器となるスノーゴンは、『帰ってきたウルトラマン』のヒーローであるウルトラマンジャックをも氷漬けにし、怪力で身体をバラバラに破壊。同作の中でも、屈指のショックシーンを作り出します。
『帰ってきたウルトラマン』以降の昭和ウルトラシリーズでは、要所要所でウルトラ戦士の身体を破壊シーンする凶悪な怪獣が幾度が登場します。『ウルトラマンタロウ』でタロウの首を刀で切断した"えんま怪獣"エンマーゴ(登場回のタイトルも、そのものズバリで『タロウの首がすっ飛んだ!』)などは、そうした怪獣の代表格です。
子どもたちにも分かりやすく死を描き、そして、そこからの痛快な逆転劇を盛り上げる為の演出なわけですが、身体を張って怪獣に挑むウルトラ戦士にとっては、かなり気の毒な気もしますよね……。
スノーゴンの登場以降、ウルトラ兄弟の敗北描写は、どんどんエクストリーム化していったわけで、その口火を切ったスノーゴンは何とも傍迷惑な怪獣なのです。
5:ウルトラ兄弟を全滅させた超極悪陰湿宇宙人! "地獄星人"ヒッポリト星人(『ウルトラマンA』)
『帰ってきたウルトラマン』によって幕を開けた「第2期ウルトラシリーズ」。『ウルトラマンA』は、その2作目にあたる作品として、1972年に放映を開始しました。
怪獣を凌駕する戦闘力を誇る「超獣」という新概念の登場や男女2人による合体という新たなる変身シークエンスの起用など、意欲的な新要素を数多く盛り込んだ本作の中でも、特に強い存在感を放ち続けている敵キャラクターが中盤に登場するヒッポリト星人です。
狡猾な上に戦闘力も高いヒッポリト星人は、あの手この手で、地球人に心理的、物理的なプレシャーをかけ、ウルトラマンエースの引渡しを要求します。この時点で、その悪辣さに、子どもは大いにヤキモキさせられるのですが、何より凄いのがこの後の展開です。
何と、エースとの直接対決になると、ヒッポリトカプセルという特殊な兵器を使って、エースをブロンズ像にしてしまう(RPGゲームでいうところの「石化」)のです!
更に、生命活動を停止してしまったエースを救出するべく駆けつけた、ウルトラマン、セブン、ジャック、ゾフィーらウルトラ四兄弟をヒッポリトカプセルで次々に捕獲し、エースと同じくブロンズ像にしてしまいます。
更に、更に、このヒッポリト星人が登場するエピソードは、話数が前後編に分かれていて、ウルトラ兄弟が全滅したところで、前編が終了してしまうのです!
数々の悪質な作戦を仕掛けてきた陰湿な宇宙人を最後は、ヒーローのエースがやっつけてくれるものだとばかり思っていた全国の子どもたちにとって、この唐突かつ圧倒的なバッドエンドは、凄まじい衝撃を与えたことでしょう。
同じく『ウルトラマンA』に登場した"異次元超人"エースキラーや、『ウルトラマンタロウ』の"暴君怪獣"タイラントなど、ウルトラ兄弟を立て続けに撃破した凶悪怪獣は、シリーズの歴史に点在していますが、「石化」という極悪な方法で兄弟を一度に葬ってみせたヒッポリト星人のインパクトは、群を抜いています。まさに、"トラウマ"な凶悪宇宙人です。
6:主要人物ほぼ全員を殺害! 円盤は生物だった! "円盤生物"シルバーブルーメ(『ウルトラマンレオ』)
『ウルトラマンレオ』に登場したシルバーブルーメも、その凶悪な所業がファンの間で語り継がれる怪獣です。
クラゲのようなビジュアルで、強力な溶解液と触手による攻撃を主力武器とする、この怪獣は、登場するやいなや地球防衛組織「MAC」の宇宙基地を急襲し、隊員や戦闘機を次々に捕食するという凄惨な場面を作り出します。
ウルトラマンレオ(おおとりゲン)以外の隊員たちは、為す術もなく、絶叫と共にシルバーブルーメの体内に取り込まれてしまい全員殉職。MACの隊長だったウルトラセブンことモロボシ・ダンまでもが生死不明になってしまうのです。
この怪獣の極悪非道な所業はそれだけにとどまらず、地球に来襲して、街を破壊。この際、地球でレオが家族同然にお付き合いをしていた人々も倒壊したビルの下敷きとなり、ほぼ全員が死亡してしまいます。
この悲劇を皮切りとして、ウルトラマンレオにとって最後の戦い……円盤に変形する能力を持つエキセントリックなビジュアルの地球外生命体「円盤生物」との長く、孤独な死闘が幕を開けるのです(『恐怖の円盤生物シリーズ!』)。
円盤生物の尖兵となったシルバーブルーメは、上記のような所業から、シリーズの中で異彩を放ち続けている怪獣です。これまで、幾度となく怪獣や宇宙人の脅威に晒されてきた歴代防衛組織ですが、主力隊員を全滅に追い込んだのは、このシルバーブルーメが初めて! まさに空前絶後な凶悪さを持つ怪獣です。
この衝撃的過ぎる展開は、今、観返してみても圧巻であり、まさに「トラウマ級」なインパクトを誇っています。
ちなみに、このシルバーブルーメ登場の背景には、オイルショック影響下における制作予算の逼迫があったことが後に語られています。シルバーブルーメの殺戮劇には、セットの維持費やレギュラー出演者の出演料を抑える為の苦肉の策という側面もあったのです。
怪獣は、時に当時の時代背景や社会情勢をも反映します。シルバーブルーメ(と、他の円盤生物たち)もまた、当時の経済状況を後世に伝えてくれる貴重な資料なのです。
7:シリーズ屈指のホラー回! "コブ怪獣"オコリンボール(『ウルトラマン80』)
「オコリンボール」という怪獣の名前を聞いて、一体、どんな姿を想像しますか?
きっと多くの人は、そのコミカルな名前からポップで可愛らしいデザインの怪獣を思い浮かべるのではないでしょうか? しかし、このオコリンボールは、その名前からは想像できないとても恐ろしい怪獣なのです。
「主人公であるウルトラマンが中学校の教師」という異色かつユニークな設定の『ウルトラマン80』は、『ウルトラマンレオ』で一度、放映が終了したシリーズの5年ぶりとなる復活作であり、昭和の特撮テレビシリーズの最終作となった作品です。
そんな『ウルトラマン80』の第20話『襲来!! 吸血ボール軍団』に登場したのがオコリンボール。ボール状の身体を持つ謎の地球外生命体として地球に侵入し、人間の首に取り付き、ミイラ状になるまで吸血するという名前からは全く想像できないホラーな悪行で日本をパニックに陥れます。
分裂、増殖するという手に負えない習性まであり、その被害はあっという間に拡大。一般市民や対策会議に出席していた各国の要人を襲撃し、昭和の歴代ウルトラシリーズの中でも、トップクラスの被害を出しました。
70年代のオカルトブームや、『エクソシスト』『ゾンビ』のヒットを皮切りに海外で次々に制作されたホラー映画の影響を受けてか、昭和のウルトラシリーズも後半に入るとSFというよりはホラー、オカルトめいた怪獣が顔を出してきます。
オコリンボールは、そうした時代性が色濃く出た怪獣です。直接的なスプラッター描写こそないものの、得体の知れない宇宙生物に襲われる恐怖感が上手く描写されており、ホラーの醍醐味を味わえる話数となっています。大人でもトラウマになってしまいそうな、非常に良くできたホラーエピソードですよ。