現代社会にも通じる問題提起を酩酊感一杯の戦闘シーン! "サイケ宇宙人"ペロリンガ星人(『ウルトラセブン』)

ハイクオリティな特撮シーンとシリアスで社会性の高いシナリオからSFドラマの金字塔として、「シリーズ最高傑作」の呼び声も高い人気作『ウルトラセブン』。名作、名キャラクターが数多く存在していますが、今回はペロリンガ星人をご紹介します。

第45話『円盤が来た』に登場するペロリンガ星人は、自分たちの円盤を星に偽装し、地球に接近。偶然、その円盤を発見したアマチュア天体観測家のフクシン青年の前に少年の姿を借りて姿を現します。

本エピソードの主要登場人物であるフクシン青年は、職場でも近所でも周囲に馴染むことができない孤独な人間です。円盤を見たと話しても誰にも信じてもらえず、果ては、防衛組織(ウルトラ警備隊)への通報も無視されてしまう始末。そんなフクシン青年をペロリンガ星人は、言葉巧みに誘惑しようとするのですが……。

『円盤が来た』は、社会に上手く順応できない孤独な人間の姿を物語の軸として描いた、非常にドラマ性の高いエピソードです。観終わった後に何とも言えないモヤモヤ感が残るラストシーンには、現代社会にも通じる問題提起が込められています。

そんな大人びたシナリオに加えて、「全身ケロイド状態の雄鶏」のようなペロリンガ星人の不気味な容姿と、戦闘の派手さよりも映像美を追求したセブンと円盤の対決シーンのサイケデリックな映像が、このエピソードを絶対に忘れられない特異な感触を残すものにしています。

前衛的で"アート"な戦闘シーンと社会から孤立した青年の姿を描くシナリオ……『円盤が来た』は、大人になった今こそ観返して、製作者の意図をジックリと噛み締めたくなる名エピソードです。

皆のヒーロー、ウルトラマンをバラバラに! "雪女怪獣"スノーゴン

ウルトラ戦士たちを打ち負かし、時に、死に追いやった歴代の強敵怪獣たち。そこからの復活劇こそが大きなドラマなわけですが、メインの視聴者である子どもにとっては、やはりヒーローが負ける姿というのは、相当にショックなものです。

しかも、そのやられ方というのが、視覚的にインパクトの強いものであれば、衝撃はより大きなものとなります。

『帰ってきたウルトラマン』に登場したスノーゴンは、ヒーローであるウルトラマンの身体をバラバラにするという前代未聞の悪行をしでかし、その異色の戦績から今もファンに記憶されている怪獣です。

あらゆるものを瞬時に凍らせる冷気を武器となるスノーゴンは、『帰ってきたウルトラマン』のヒーローであるウルトラマンジャックをも氷漬けにし、怪力で身体をバラバラに破壊。同作の中でも、屈指のショックシーンを作り出します。

『帰ってきたウルトラマン』以降の昭和ウルトラシリーズでは、要所要所でウルトラ戦士の身体を破壊シーンする凶悪な怪獣が幾度が登場します。『ウルトラマンタロウ』でタロウの首を刀で切断した"えんま怪獣"エンマーゴ(登場回のタイトルも、そのものズバリで『タロウの首がすっ飛んだ!』)などは、そうした怪獣の代表格です。

子どもたちにも分かりやすく死を描き、そして、そこからの痛快な逆転劇を盛り上げる為の演出なわけですが、身体を張って怪獣に挑むウルトラ戦士にとっては、かなり気の毒な気もしますよね……。

スノーゴンの登場以降、ウルトラ兄弟の敗北描写は、どんどんエクストリーム化していったわけで、その口火を切ったスノーゴンは何とも傍迷惑な怪獣なのです。

ウルトラ兄弟を全滅させた超極悪陰湿宇宙人! "地獄星人"ヒッポリト星人(『ウルトラマンA』)

『帰ってきたウルトラマン』によって幕を開けた「第2期ウルトラシリーズ」。『ウルトラマンA』は、その2作目にあたる作品として、1972年に放映を開始しました。

怪獣を凌駕する戦闘力を誇る「超獣」という新概念の登場や男女2人による合体という新たなる変身シークエンスの起用など、意欲的な新要素を数多く盛り込んだ本作の中でも、特に強い存在感を放ち続けている敵キャラクターが中盤に登場するヒッポリト星人です。

狡猾な上に戦闘力も高いヒッポリト星人は、あの手この手で、地球人に心理的、物理的なプレシャーをかけ、ウルトラマンエースの引渡しを要求します。この時点で、その悪辣さに、子どもは大いにヤキモキさせられるのですが、何より凄いのがこの後の展開です。

何と、エースとの直接対決になると、ヒッポリトカプセルという特殊な兵器を使って、エースをブロンズ像にしてしまう(RPGゲームでいうところの「石化」)のです!

更に、生命活動を停止してしまったエースを救出するべく駆けつけた、ウルトラマン、セブン、ジャック、ゾフィーらウルトラ四兄弟をヒッポリトカプセルで次々に捕獲し、エースと同じくブロンズ像にしてしまいます。

更に、更に、このヒッポリト星人が登場するエピソードは、話数が前後編に分かれていて、ウルトラ兄弟が全滅したところで、前編が終了してしまうのです!

数々の悪質な作戦を仕掛けてきた陰湿な宇宙人を最後は、ヒーローのエースがやっつけてくれるものだとばかり思っていた全国の子どもたちにとって、この唐突かつ圧倒的なバッドエンドは、凄まじい衝撃を与えたことでしょう。

同じく『ウルトラマンA』に登場した"異次元超人"エースキラーや、『ウルトラマンタロウ』の"暴君怪獣"タイラントなど、ウルトラ兄弟を立て続けに撃破した凶悪怪獣は、シリーズの歴史に点在していますが、「石化」という極悪な方法で兄弟を一度に葬ってみせたヒッポリト星人のインパクトは、群を抜いています。まさに、"トラウマ"な凶悪宇宙人です。

主要人物ほぼ全員を殺害! 円盤は生物だった! "円盤生物"シルバーブルーメ(『ウルトラマンレオ』)

『ウルトラマンレオ』に登場したシルバーブルーメも、その凶悪な所業がファンの間で語り継がれる怪獣です。

クラゲのようなビジュアルで、強力な溶解液と触手による攻撃を主力武器とする、この怪獣は、登場するやいなや地球防衛組織「MAC」の宇宙基地を急襲し、隊員や戦闘機を次々に捕食するという凄惨な場面を作り出します。

ウルトラマンレオ(おおとりゲン)以外の隊員たちは、為す術もなく、絶叫と共にシルバーブルーメの体内に取り込まれてしまい全員殉職。MACの隊長だったウルトラセブンことモロボシ・ダンまでもが生死不明になってしまうのです。

この怪獣の極悪非道な所業はそれだけにとどまらず、地球に来襲して、街を破壊。この際、地球でレオが家族同然にお付き合いをしていた人々も倒壊したビルの下敷きとなり、ほぼ全員が死亡してしまいます。

この悲劇を皮切りとして、ウルトラマンレオにとって最後の戦い……円盤に変形する能力を持つエキセントリックなビジュアルの地球外生命体「円盤生物」との長く、孤独な死闘が幕を開けるのです(『恐怖の円盤生物シリーズ!』)。

円盤生物の尖兵となったシルバーブルーメは、上記のような所業から、シリーズの中で異彩を放ち続けている怪獣です。これまで、幾度となく怪獣や宇宙人の脅威に晒されてきた歴代防衛組織ですが、主力隊員を全滅に追い込んだのは、このシルバーブルーメが初めて! まさに空前絶後な凶悪さを持つ怪獣です。

この衝撃的過ぎる展開は、今、観返してみても圧巻であり、まさに「トラウマ級」なインパクトを誇っています。

ちなみに、このシルバーブルーメ登場の背景には、オイルショック影響下における制作予算の逼迫があったことが後に語られています。シルバーブルーメの殺戮劇には、セットの維持費やレギュラー出演者の出演料を抑える為の苦肉の策という側面もあったのです。

怪獣は、時に当時の時代背景や社会情勢をも反映します。シルバーブルーメ(と、他の円盤生物たち)もまた、当時の経済状況を後世に伝えてくれる貴重な資料なのです。