子どもたちが自立し、理論的にものごとを考えられるようになるためには、親子の良質なコミュニケーションが必要なのです。
そこで登場するのが、三森ゆりかさんの「察しの悪い振りをする」。この接し方が、論理的に考える力を引き出すためのトレーニングとなっているのです。
「子どもが何を考えているのか、子どもが何を求めているのか十分に察知し、理解できるけれど、あえてわからない振りをして、子どもに自分の考えを言葉に出して表現させること、それが『察しの悪い振り』をする目的」と同冊子で紹介されています。
なるほど、何でもかんでも先回りして、こっちが会話を誘導するのではなく、子どもが自身で考えていることを、自分の言葉や態度で表現するまでじっくり待つのです。
一見、察しが悪いように見えますが、これが子どもにとって考える力を伸ばすことに。会話の量を増やすべく、アレコレと話しかけるのではなく、きちんと子どもが理論的に考える時間を与える必要があるのです。
同じように、K.I.T虎ノ門大学院教授で書籍『親と子の「伝える技術」』の著者・三谷宏治さんも、親子とのコミュニケーションについて研究されています。
同書のなかで、最近の子どもの傾向として、質問に対して、「何となく」「知らない」「わからない」「ビミョー」などといった曖昧な返答が見られるようになっているとのこと。
これが習慣化すると、物事を掘り下げて考えることを放棄してしまいます。
もし、このような態度を取るようになってしまったら、「それを許さない!!」という毅然とした態度をとるべきと三谷さんはアドバイスしています。
「子どもの言葉は、印象を語っただけで終わってしまったり、感覚的な言葉だけで伝えようとしたり、オノマトペ(擬音語)だけですべてを語ろうとしたりすることが多いものです。
《中略》印象の中身を掘り下げて考えたり、音で表現した中身を具体的な言葉で言い換えたりすることができるようになると、さまざまな場面で必要に応じて自分の感覚や印象を具体的な言葉で表現する能力が身につくでしょう」
出典『親と子の「伝える技術」』
子どもが述べたことに対して、「なぜ?」「どうして?」と問いかけるのは効果的。その問いかけが日常的に行えると、子どもは問われなくても、理由を考え話すようになるのです。
そうやって論理的に物事を考えることに慣れていくのです。
親子での会話は大切ですが、なんでもかんでも親がリードするような会話ではだめ。きちんと子どもが自分で考えて、自分の言葉で表現するような機会をつくる必要があるのです。
いま一度、親子の会話について考えてみませんか?