シリアスな映像に魅入り、中村悠一さん&櫻井孝宏さんの掛け合いに沸いた『虐殺器官』

『TIFFアニ!!』最後の作品となったのが『虐殺器官』。

2009年に34歳の若さでこの世を去ったSF作家伊藤計劃氏の処女作であり、カルト的な人気を誇る同名小説のアニメ化。

円城塔氏との共作「屍者の帝国」と、遺作である「ハーモニー」と共に3作連続公開される予定だったものの、制作スタジオの倒産により公開延期。

様々な困難を乗り越え、2017年2月3日の公開が正式に発表されました。

会場では、本編の冒頭映像をたっぷり贅沢に上映。

会場がしん、と静まり返るほどの完璧な世界観の再現に、笠井アナウンサーも「これは“アニメ”というジャンルにくくれない、ものすごい作品です。ハリウッドの映画に負けていない!」と大興奮。

ダークでハードな作品ならではの緊張感の中、主人公クラヴィス・シェパード大尉役の中村悠一さん、クラヴィスが追う謎の男ジョン・ポール役の櫻井孝宏さんが登場すると、笠井アナウンサーが「誰かと思ったら、おそ松とカラ松じゃないですか!」と、中村さん&櫻井さんをいじり、一気に和やかなムードに。

『虐殺器官』 中村悠一さん

原作について中村さんは「オーディションを受ける際に原作を読みました。戦いのシーンや会話など、映像映えしそうだなと思いましたが、中途半端に作るとみっともない作品になるとも思いました。

セリフ量も多いんですが、それを削ると『虐殺器官』ではなくなってしまう。それをどうするのか? 楽しみでもありました」とコメント。

ようやく公開が決定した事に関しては、「ニュースの翌日に『虐殺器官』の取材が入ってたんですよ。ネットでニュースを見てマネージャーに「ニュース見たけど、明日って取材あるの?」と電話しました(笑)。結局、取材はなくなりました。

でも、再出発のチャンスをいただいて、あの時よりも時間をおいて、より良いものに仕上がっていくだろうと思いました。音が入って、重厚感がより増したと感じました」と、主人公役の声優にとっても寝耳に水であったという、秘話を明かしました。

『虐殺器官』 櫻井孝宏さん

櫻井さんは、自身が演じるジョン・ポールについて「物語のキーマンです。タイトルにもなっている“虐殺”を起こしてしまうものを見つけた人です。

虐殺って凄く強くて怖い言葉ですが、そこから想像されるものとはちょっと違う、深い怖さを持ったキャラクターです。最初は出てこないですが、彼が出てきた時が、物語の核心に迫っているという難しいキャラクターでもありました」とコメント。

続けて「血の表現など、目を覆いたくなるような、容赦のない表現になってますが、それが最後につながるフックとなっています。リアリティ、―もしかしたらあるんじゃないか? こういう未来が来るんじゃないかという予感など、いろんなことを考えさせられる作品です」と作品の魅力を語りました。

倒産を経て、自ら「ジェノスタジオ」を設立し、完成にこぎつけた『虐殺器官』の救世主である山本幸治プロデューサーは、この前代未聞の倒産・公開未定騒動について、「ここで頑張って作りきれば、目立つなと思って作りました(笑)」と一言。苦労を経てきた人だからこそ言える、この言葉に会場からは大きな声援が贈られました。

■飯野美紗子さん&田中有紀さんはこう見た!
「伊藤計劃作品は、アニメの主題歌が大好きなアーティストの『EGOIST』さんだったので、それをきっかけに知り、映画を観て、本も読んでいます。

今回観た冒頭の映像だけでも、とても深く考えさせられるストーリーで、完成した作品を観るのが楽しみで仕方ありません。原作ももう一度読み返してみます」(飯野)

「櫻井さんもおっしゃっていましたが、ハードなシーンもしっかり描かれているところに気合いと覚悟を感じました。

また、公開が決まるまで様々な困難を乗り換えた、スタッフ・キャストの皆さんの苦労と頑張りに驚き、感動しました。公開がとても楽しみです」(田中)

後編では、女性向けアニメ音楽誌「LisOeuf♪」の人気企画、声優・野島健児さんによる「のじけんBAR」の公開イベント『Supported by LisOeuf♪(リスウフ) のじけんBAR~TIFFアニ!!にきまぐれ開店!~』の模様、そして、飯野さん&田中さんのインタビューをお届けします。