法律を子どもにもわかりやすく、そして必要とするところに届けたい、という目的で作られた『こども六法』が売れています。

帯には「君を強くする法律の本」。大人にとっても難解な法律を、かわいらしいイラストと平易な文章で説明した本書は、いじめや虐待を受けている子どもたちに、困難に立ち向かう知恵を授けてくれる一冊です。

「いじめは犯罪」という認識は世に浸透してきましたが、なかなか現場である学校では問題解決までつながっていないように思えます。

子どもがいじめにあったとき、大人に助けを求められるような、また親にとっても、知っておきたいことが詰まった一冊です。

著者の山崎聡一郎さんに、お話を伺いました。

「あいつキモイよな」そのひと言が罪になるって、知っていましたか?

山崎聡一郎さん

「あいつキモイよな」

クラスの中のひとりに向けられた、そのひと言が罪になるって、知っていましたか?

罪名は、刑法第231条「侮辱」。

多くの人たちの前で人を馬鹿にしたり、悪口を言ったりした人は、拘留か、科料とします。出典(『こども六法』)

山崎さんは小学校時代、いじめに遭い、それを察した両親が学校側に訴えるも、結局、十分な対応はされないという体験をお持ちです。当時のことから、お話を伺いました。

――そのとき、どんな気持ちでしたか?

山崎さん(以下、山)「大人はなにもしてくれない、やられっぱなしなんだな、と思いました」

『こども六法』は子どもにも読めるし、大人にも通用する

――その後、中学で六法に出会って、自分のされていたことはこういうことだったんだ、と気づくのですよね。

山「そうですね。小学校に六法が置いてあったらよかったのになー、と思ったのを覚えています。

こども六法は、中身をわかりやすくして子どもに読ませてあげよう、というよりは、これだったら子どもも読めるだろうと大人に思わせて、子どもの手の届くところに置いてもらおう、というのが狙いでした。

そのうえで、必然的にわかりやすい文章になっているのであれば、子どもにも読めるだろうし、だからといって、簡単にし過ぎないことで大人にも通用するんだよ、ということを子どもたちには強調したいですね。

――ちなみにどういうきっかけで、六法を手にしたのでしょうか。

山「たまたま図書館で手に取って、すごく素朴に”あーこんなに法律っていっぱいあるんだ”と。その後、中高と法律にのめり込んで。本のアイディアは、大学2年のときに浮かびました」

法律を知らないことは言い訳にできない

山「子どもでも読める法律書ってないよねっていうのと、そもそも子どもの手の届くところに法律書って置いてないよねと、この2つを誰も不思議だと思わないんだー、と思ったことがきっかけでしたね」

――私なんかは、六法全書、たぶん開いたことないです・・・。

山「法律は弁護士や裁判官などが特権的に知っておけばいいものなのかといったら、そうではないんですよ。”法の不知はこれを許さず”といって、法律は皆が知っているというのが前提なんですね」

――本書にもある「法律を知らないことは言い訳にできない」ということですね。

山「いじめなど、なにか嫌な目にあったとき、それはおかしいんだよってちゃんと言葉にしてあるのが法律ですよね。言語化できるということは、状況を変える力になるのだと思います。

相談相手が増えるのが選択肢のひとつになればいい、と思っています。

なにかあったとき、子どもが頼れるのは、親か先生ですよね。でも、親も先生も頼れないとき、この本が新たな相談相手を探すヒントになれば」

――たとえば、親のすることでも、子どもに来た手紙を勝手に開けたら、刑法第133条の「信書開封」の罪に当たるんですよね。

そういった、親が子どもにする暴力や虐待以外にも、子どもを支配下に置こうとすることも犯罪だとわかれば、子どもが力をつけて、親の支配から逃れることも可能かもしれません。