これからの時代を生きるために法律を知ることは必須

山「これからの時代は、法律を知ることは避けて通れないでしょうね。グローバリゼーションが進み、価値観の多様な世界中の人たちと仕事する時代がやってきます」

――これからの時代を生きるために、法律が必須ということですか?

山「グローバル教育とは、英語教育だと思っている人が多いですが、国際社会に対応できる素養を身につけることが、グローバル教育なんです。

価値観や考え方の異なる人たちとコラボレーションしていく際に、指針になるのが法律的なものの考え方です。

それを子どもたちに伝えていくことは、重要です。親はぎりぎり逃げ切れるかもしれませんが、子どもは確実に逃げ切れませんから」

――きびしい……(笑)法律で禁じられているからダメ、なのではなく、なぜ法律で禁じられているのかを考えることが重要になってくるのだと思いました。

ただ、小学生くらいだとまだ「先生に怒られるから」レベルでしか法律をとらえられない気もしますが。

山「小3、4くらいだと、禁止されてるからダメ、 という価値観が強い年齢ですよね。

国家とか、国家を形成する自分というものの意識が、実は法律に反映されていて、法律は必要に応じて変えることもできるし、法律は自分達の合意としてあるんだとわかってくるのは、それ以降の年齢です」

――自分が参加できるという意識を持つと、法律への考え方も変わってきそうですね。

山「今の日本だと、法律というと、校則のようなもの、というイメージが強いと思います。

校則は、守らなくてはいけない理不尽なもの、自分たちで変えられないものですよね。それに、校則は管理するためのものですから、本来、法律と校則はあまり親和性はないんですが、なぜか同じように思っている人が多いんです。

今後、子どもたちが法律を知っていったら、”この校則、おかしい”と言い出す子どもと、”いや、決まりは決まりだ”と子どもより子どもみたいなことを言う大人、みたいな構図も見られるかもしれませんね」

――それは面白いですね。映画化されたりして(笑)

こども六法は、いじめの当事者だった山崎さんだからこそ、生まれたアイディアの賜物だということが、お話を伺ってわかりました。

いじめに対していやだと声をあげられなかった子どもが、この本を手にすることで、自分のために戦えるようになるかもしれません。そうなったとき、法律は自分たちを守るためにあると、初めて身をもって知ることができるのですね。

私たち大人にとっても、法律を知ることは、これから生きていくうえでの力になるのだと思えました。

【取材協力】山崎聡一郎

1993年生まれ。
教育研究者、写真家、俳優。合同会社Art&Arts社長。慶應義塾大学SFC研究所所員。
慶應義塾大学総合政策学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。

学部2年次より「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究開始。3年前に研究奨励金を受給して法教育教材「こども六法」を作成した。またオックスフォード大学に短期留学し、政治教育への演劇的手法を学んで単位を取得。

現在はいじめ問題に関する研究・情報発信を行いながら、ミュージカル俳優としても活動。各種演奏会の企画運営を行う一方で、劇団四季「ノートルダムの鐘」に出演するなど、活躍の場を広げている。法と教育学会正会員、日本学生法教育連合会正会員、板橋区演奏家協会会員。