興味のあることから始めてまわりに広げていくべし!
――図鑑などはたくさん出ているので、どこから買っていいのか迷いますよね。最初は子どもが興味があるものから手をつけるのがいいでしょうか?
小川:それでいいと思います。
たとえばうちの子でやった方法なんですけど、うちの子は電車が好きなので、最初は幼児向けの電車の絵本とか都内の特急電車とか、ただ見て名前を知ってるかどうか楽しむものを買いました。
成長して、だんだんといろんな路線とかにも興味を持ちだしたら、大人向けの本も混ぜていくんですね。
子どもが「電車の構造」とか読んだってわからないでしょ(笑)。
でも、わからないんだけど部分的にその図がおもしろかったりとか、部分的に説明がわかったりする。
そうするともう少しその本読んでみようっていうことで、折に触れてその本を開くようになるわけですよ。興味のあることだから、少々わからない漢字があってもへこたれずに読む(笑)。
そうすると結果的に小学校等で習っていない漢字でもとりあえず読んでみるっていう力がついていくんですよね。
興味があるっていう力を使って深掘りしていくっていうのはすごくいいです。
――うちの息子も電車が好きですが、ただ電車の知識ばかり深まるのはどうなのかという心配も……。
小川:好きなものの余力を借りてまわりに広げていくっていうのがいいです。
たとえば電車であれば線路が走りますから、そこには当然地図がついてくるわけです。
だから電車のいろんな駅名とか新幹線の話をしながら都道府県を覚えてしまって、地図を開いたらその新幹線の線路ぞいのいろんな特産物であるとか、そういう話をしながら「じゃあ、今度乗るときにホントか見てみよう」とかね。
そうすると、地図帳を見るようになりますよね。
というように好きなことの周辺部や関連するようなものを掛け合わせていけばいいんです。
電車が好きだからひたすら電車の情報にっていう持っていき方をすると視野が狭くなるから、好きなもののまわりにあるものも同時に好きになってもらえれば結果的にどんどん拡大していくってことです。
ただ、あれもこれもと満遍なくタスクのように与えようとするとダメですね。やらされることは子どもからすると自分自身から動けなくなるので。
――では、まだ何に興味があるのかわからないような小さい子向けの図鑑の選び方のポイントってありますか?
小川:乳児の場合、視力という意味では見えているんだけど、目や耳から入ってきた情報に対して脳が処理できないんですね。
よく生後半年くらいまで視力は30cmから1mくらいの距離が見えるだけで、だからママの顔も実はよく見えてないんだっていいますよね。
目を通して網膜とか神経にはそのまんま映像がいってるんだけど、脳が丸だ四角だ三角だ線だって情報を割り振れないので、ピントが合わないときのビデオカメラみたいに見えてるんですよ。
だんだんと形を覚えたり色を覚えたりすることで見えてくる。
そういう意味では乳幼児に対してはわかりやすい形、色。本のなかでも「まり」って絵本を紹介してたと思うんですけど、すごく単純な丸三角四角だけで構成されてる絵本で、色がはっきりと区別されてるんですね。
文も谷川俊太郎さんの文なんですけど、一単語ずつの組み合わせで単純な音の組み合わせにしかなってないんですよ。
最初はそういったもので形や色や音の響きを子どもと一緒に楽しんで、読んであげたらいいですね。
その際のポイントなんですけど、子どもは口では言えないですけど、興味があるページとそうでないページでは見入り方が違うので、すごく気に入ってたら満足するまで見させてあげたらいいです。じーっと待っててあげればいいんです。
内容を子どもの頭に入れようとしてあげるんじゃなくて、あくまで子どもがいろんなものと知り合う、その出会いのお手伝いをしてあげるだけで、出会ったものにどんな反応するかは子どもに任せる。
――図鑑というと、写真でなくてはいけないような気がしていました。
小川:図鑑のたぐいなんかも写真よりはイラストのほうがいいですね。
世界中で人気のあるキャラクターっていうのは大体似たような形の組み合わせなんです。それが幼児にとって自然と認識できる形だからなんですね。
写真は情報が複雑すぎて、幼児にはどこをどう見ていいかわからないんですよ。単純にデフォルメしたイラストのほうがかえって情報として受け止めやすいんです。
そういう子ども側の事情はわかってあげたほうがいいですね。
子どもって、家族の写真好きでしょ。あれは、身近で何かがわかってるから見られるんです。そこにグランドキャニオンの写真とか持っていってもわからない(笑)。
でも、あるときから写真を見られるようになります。もう少し複雑な形をおもしろいと思うようになる。
そのときに、写真の図鑑を見せたらいいんです。
図鑑を買ったからといってすぐに開くのを期待しないでいいと書いたんですけど、それはそういうことなんです。いつぐらいからそういう写真の映像を受け止められるようになるかっていうのは子どものタイミングなので。何歳の何ヶ月になったら買いましょうとは言えない(笑)。
そばにあれば子どものタイミングで出会えるし、今すぐ使うかとは考えずに置いておきたいですね。
――自分で選べるような年齢であれば、本人に選ばせてもいいですか?
小川:図書館や本屋さんには絶対一緒に行ったほうがいいですね。
一緒に見に行って、いろんなものがある中で選ぶっていうのも体験させてあげたいです。
見たときの好きな雰囲気ってあるんですよ。カバーの写真が好きだとか、たまたま開いたら自分の好きなものが載ってるとか。
本人がパッと選んだら、これねって預かっといてあげて、本のコーナーあっちまであるからこれよりいいなと思うものがあったらそっちにしよう、というくらいで基本子どもに任せていいと思います。
あとは子どもにひとつ選ばせて、「ママこれ気に入ったからこっちにしよう」って自分用も買う。
そうすると、「どこがおもしろいの」って絶対首つっこんできますから。
親がおもしろいと思ったものは気になるんです、親があなたのためにって買ったものはイヤですけど(笑)。