「感情を抑制されている」具合が難しかった

©Project Itoh / GENOCIDAL ORGAN

中村:勿論、僕たちは戦場に行ったことがないので、そういったキャラクターを演じる際には、「恐らくは、こうだろう」と先輩たちが演じたものを観て、それを参考にします。

自分たちの想像力に加えて、先人たちがどのように演じてきかというのを色々とトレースしていくんですけど、そこに更に、フィルターが掛かって、「感情を抑制されてます」という、その具合がホントに難しいというか……。

僕自身もアフレコから随分経って、ほぼ白紙の状態で観返した時に、冒頭の潜入捜査のシーンが、「何でこんなにフラットで、やや緊張感に欠けているのかな?」と思ってしまいました(笑)。でも、すぐに、「そうか、これは感情をコントロールされているっていう設定だった」っていうのを思い出してですね。

そこは、僕が感じたように、観ている人にとって違和感として捉えられる部分かなと思うんですね。それっていうのは決して間違いじゃなくて、クラヴィス自身もそこに気付いて、自分の中でどんどん違和感として大きくなっていくというシナリオになっているので。

――そうした難しい役柄を演じる上で、何か思い出に残ったエピソードはありますか?

©小林裕和

中村:皆さん、演じるにあたって加減を難しくやっていましたしね。(劇中でクラヴィスの部下であるリーランドを演じる)石川界人くんは、痛覚を無くしているキャラクターですので、死ぬ寸前まで普通に喋れって言われていて、それが本人の正義に非常に合わなかったみたいで(笑)。

スタッフに「いや、最後まで苦しまないで、突然、死んでください」って言われていて、やっぱりそういうのって難しいんだなと思いました。役を演じるのに、想像を張り巡らせた上で、それを一回カットするっていうのが。

櫻井:そういうところも、やっぱりお芝居をする人間としては、色々と刺激になった部分もあって、けれど、やっぱり「怖いな」って単純に思いましたね。

感じるものを感じさせなくすることって、異常じゃないですか。それに対して、「怖いな」って思う自分もいるんですけど、でも、「日常生活を送っていて、そういう部分ってあるよな……」って思うところもあって……。全く突飛ではない、どこか身近さを感じさせるところも、この作品の凄いところではないかと思います。

「どうしても形にするんだ!」という思いを目の当たりにした

――ステージで、アフレコが行われたのが去年の1月だったと仰られていましたが、今回、公開日が決定するまで約2年という時間が経過しています。色々と困難があった作品かとは思いますが、現在の率直な感想をお聞かせいただけますか?

中村:中止した計画が再びこうやって形になっていく。それをその後、「またやります!」っていうことが珍しいので、この作品に対する制作サイドの熱量っていうのを、より強く感じることができましたし、それは、本当に凄いことだなぁと思いました。

櫻井:うんうん。

中村:「どうしても形にするんだ!」っていう思いですよね。それを僕らも目の当たりにしました。ですから、感慨深いものは、やはりありますね。

櫻井:制作スタジオの倒産というニュースは、本当に青天の霹靂だったんですけど、それでも今、中村くんも言っていましたけど、具体的な日時を発表できる段まで来たというのは、喜ばしいことだなと思います。

――出演者の皆さんも追加収録は幾らでもというお気持ちでいらっしゃったと、今日の舞台上でも仰っていましたね。

中村:声の収録もイチから撮り直さなければならないっていうレベルで制作し直しているのであれば、音も撮り直した方が良いですよね……みたいな話をしたりもしましたね。

フォトギャラリー【撮り下ろし写真をもっと見る】インタビューは時おり笑いも起きる、和やかな雰囲気で行われました!
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