晴れのち雨はトレンディ注意報

友人たちとプールに行く、いわゆる水着回となった第5話「波紋」。こちらもBパートの終盤、皆と別れて帰路につくはずの誠が、気持ちを抑えきれずに世界のもとへ。誠からの執拗なメールを無視していた世界も、ついには応じ、雨の夜に2人は関係を結んでしまう。

駅前での「ダメだよ!」「好きだよ!」の押し問答の末、抱き合い、口づけを交わすなか、世界の手から傘が落ちる。ここだけ、本当にここだけ見ると、トレンディドラマのような錯覚を覚えます。栗林みな実(現Minami)さんの曲「涙の理由」も相まって、よりドラマティックな名場面と言えるのではないでしょうか。

“TVアニメ『School Days』第2話(願望)”

4つ目は、まだまだポジティブな内容の第2話「二人の距離」から。付き合い始めてから関係がうまくいかない誠と言葉。世界の説得もあり、駅のホームで2人は、改めてお互いに向き合うことを宣言します。

「俺、もう桂の嫌がることは絶対にしないって誓うよ!」(誠)、「私のほうこそ、伊藤くんのこともっとわかるようになりたいです」(言葉)。積極的になった言葉は、急速に距離を縮めてなんとKISS!

キラキラしたエンディング曲「愛のカケラ」(橋本まなみさん)とともに、幸せな未来を予想させる多幸感に満ち溢れたラストは、まさに“いい最終回”にふさわしいものでした。

たった一言で幕を開けた『School Days』本当の始まり

最後は誠の名場面。当然、主人公にフォーカスせずには終われません。と言いつつも、選んだのは続く第3話「すれ違う想い」。言葉とのお家デートを楽しんで、互いに名前で呼び合い、さらに帰り際、駅のホームで言葉からほっぺにチューされた誠。

応援してくれる世界へ、この日の出来事を報告する会話から生まれた一言で、彼の人間性が集約されていました。

「なぁ世界、なんか言葉の相手するのって……疲れる」――ラストを知った上で見ると、『School Days』の真の始まりとも言える発言。誠のどうしようもないクズっぷりを感じる一方で、物語が動き始める兆しを垣間見た瞬間でもあったのではないでしょうか。

刻まれた記憶が新たな展開を渇望する

以上5つが、『School Days』の私的名場面です。改めて全話を視聴して感じたのは、言葉の妹・心(こころ)ちゃんの存在。11歳という設定年齢以上に幼く見える心ちゃん、その純粋で無邪気でおしゃまな本作唯一の良心(と言っても過言ではない)がいたからこそ、全話を通しで見ることができたのだろうと。

原作ゲームを送り出したオーバーフローはブランド活動を終了。アニメ10年という節目を迎えるとはいえ、何かを期待するのは難しい気もします。ただ、決して忘れることができない記憶を植え付けた作品であるがゆえに、新たな展開への期待を隠すことができないのです。