“障害児教育”なんて言葉を聞くと「別世界のこと、うちの子には関係ないわ」と考えてしまいがちです。でも、関係ないどころか関係大ありなのです。実は健常児の子育てをする場面で多くのノウハウやヒントが隠されています。
松永正訓著『発達障害に生まれて』のノンフィクションのモデル、立石美津子がお伝えします。
「気が散らない環境」を準備すること
子どもは興味のあること以外は集中が続かない
喫茶店で友達と向かい合ってお茶しているとき、隣の席の会話も自然に耳に入ってきます。それでも、私達には自分に向けられている声の主の言葉を選択的に拾おうとする脳のシステムがあるので、友達との会話に集中することが出来ます。
ところが、発達障害の子にはこれが難しいことがあります。自分に関係のない音も脳のフィルターを通すことなくドンドン入ってきてしまいます。
けれども、障害のあるなしに関わらず保育園で紙芝居の時間、窓から運動会の練習の笛の音や掛け声が入ってきたら子ども達は気が散ってしまいます。
筆者もかつて保育園でひらがな指導をしていましたが、隣のクラスから音楽が聞こえてくると字を書きながら歌を歌っている子がちらほらいました。
小学校1年生のクラス、担任は35名の子ども達を自分に集中させなくてはなりません。そのためには気が散らない環境を準備することがポイントです。
どちらの黒板が集中できますか?
後者ですよね。
前者のように、先生が「黒板を見ましょう」と指示をしても、そこにたくさんの情報があると子ども達は意識して見るべきものを必死で探さなくてはなりません。それでも先の喫茶店の例のように、今関係のあることを拾い出して読み取ろうとします。
その中で発達障害の一つである注意欠如/多動性障害(AD/HD)の生徒は全く違う場所を見ていることがあります。必要な情報を選択して選ぶことが困難だからです。
でも、障害のある子に限らず、子どもは興味のあること以外は集中が続かないもの。健常児だって勉強する気がなかったり、注意散漫な子だったりしたら、情報量が多すぎる黒板で授業をされたら気が散ってしまいます。
使える!「マジシャンのテクニック」
「子ども達がよそ見をしないで前を見ていたら安心」では不十分、黒板に書いてあるものを見てほしいときは、先生の視線もそちらに向けた方が効果的です。
このように子ども達を見てしまうと、生徒は先生の顔に見入ってしまい肝心な「5+2」を見ていないこともあります。
次の写真が効果的!「ここを見ましょう」といった感じで一緒に視線を動かします。
実はこれはマジシャンのテクニックなんです。
仕掛けた種が観客のバレないように、自身の視線を「このハンカチをみてください」とあえて別のところへ向けて観客の目をそらすのです。高度なテクニックですが教育の場では有効です。
集中させることが大事!家庭での工夫○✕
さて、家庭での工夫です。
- ×玩具が散らかってる部屋で注意する。
↓
○違う部屋に連れて行く。気が散らない環境で子どもに向き合って話をする。
- ×ママの声以外の声が入ってくる。兄弟姉妹が遊んでいる声やテレビの音が入ってくる環境で叱る。
↓
○テレビを消して、物音がしないところで話をする。(「タイムアウト法」と言います。)
- ×ママが皿洗いしながら、スマホ片手に子どもにあれこれ注意する。
↓
○目線をしっかり合わせて注意する