空前のパンブームだ。1日3食パンを食べている人も少なくない。けれど、その原材料である小麦がどのように作られているのか、ご存知だろうか。
袋に入った小麦粉しか見たことがない人が大半ではないだろうか。
パンに欠かせない小麦を栽培するワークショップ「種から種へ」(以下、「種種」)が開かれている。
「種種」で行われている取り組み、そして「種種」に参加するいま注目のパン職人たちのインタビューを通じて、“パンの現在と未来”を考えてみよう。
うどん用小麦でバゲット? パン職人が肉まんを作る!?
今年は桜の開花が思ったよりも早かった。
じつは、小麦も花が咲く。けっして桜のようにきれいで、感動するほどではないものの、小さくて可憐な白い花が咲く。
花が咲かないと実ができない。そのことを知ってほしいことから、「種種」のファーストシーズンでは2019年4月に小麦の花見を実施した。
片根シェフ、杉窪シェフ、栄徳シェフの他、計30人以上が畑に集まり、小麦の花見を愉しんだ。
その際、3人のパン職人がそれぞれ自慢のパンを持ち寄った。
片根シェフが持参したのは、農林61号で作ったバゲットだった。
「農林61号はうどん用に開発された小麦です。この小麦に塩と少量の酵母と水だけを加えてバゲットを焼いてみました。思ったよりも甘みがあると思います」
その後、6月に小麦を収穫。乾燥させたのち、農業指導をお願いしている澤登早苗教授が教鞭をとる「恵泉女学園大学」のキャンパスで脱穀した。
片根シェフは収穫には来れなかったが、脱穀にはスタッフと一緒に参加。
機械任せなら、収穫も脱穀も簡単。けれど、「種種」は自分たちの手でやるのがポリシー。
とくに脱穀は小麦の穂を両手でもむようにしてやらなければならない。
「以前何度か脱穀をしたことがあります。脱穀って意外と面白んですよ。品種により、脱穀しにくいものがあったり、簡単にできる小麦もあるんです」
脱穀した小麦を「種種」の事務局がある製粉会社に頼み、粉に挽いてもらった。
2019年9月、「種種」のファーストシーズンのラストを飾る、小麦を食べる会が開かれた。
会場は、恵泉女学園大学のカフェとその厨房。
設備の関係や参加人数が多かったこともあり、肉まんを作ることになった。