空前のパンブームだ。1日3食パンを食べている人も少なくない。けれど、その原材料である小麦がどのように作られているのかご存知だろうか。
袋に入った小麦粉しか見たことがない人が大半ではないだろうか。
パン作りに欠かせない小麦を栽培するワークショップ「種から種へ」(以下、「種種」)が開かれている。
「種種」で行われている取り組み、そして「種種」に参加するいま注目のパン職人たちのインタビューを通じて、“パンの現在と未来”を考えてみよう。
パン職人もパンを食べる人も、小麦のことをよくわかっていない
「種種」は、小麦の栽培を体験するワークショップだ。
愉しみながら種まき、麦踏み、収穫、脱穀などの農作業を体感する。そして最後は自分たちで育てた小麦で料理を作り、みんなで食べようという趣旨でスタートした。
農業や小麦に興味がある人、パン好きなど、毎回30名以上が参加している。
そのなかにはパン職人もいる。「365日」(渋谷区)の杉窪章匡シェフ、「カタネベーカリー」(渋谷区)の片根大輔シェフ、「ブラフベーカリー」(横浜市)の栄徳剛シェフの3名だ。
なかでも農業に対して熱い思いを抱いているのが、杉窪シェフだ。
杉窪シェフに農業に対する思いを尋ねた。
「独立前から、農業をやるって決めていました。やろうではなく、やるんだって。そのためにも10年前から農家の手伝いをして農業の勉強をしてきました」
パン職人がなぜ農業に興味を持ったのか。
「農家の高齢化に伴い、小麦を栽培する人が減ってきています。僕らのように、小麦を使う料理人が、小麦を育てるのが一番いいのではないかと思っていました」
そうした思いもあり、杉窪シェフは、片根シェフや栄徳シェフと一緒に「種種」のファーストシーズンから参加してきた。
「スーパーに並ぶ小麦粉の袋を見ると、工業製品のように思われがちですが、小麦は農産物なんです。タマネギやニンジンが1個1個味が異なるように、小麦粉も1袋ずつ味が異なります。僕達パン職人は、それを見極めてパンを作らなければなりません」
パンを焼くには、誰かが小麦を育てて収穫し、粉に加工しなければならない。にもかかわらず、パン職人もパンを食べる人も、そのことをよくわかっていない人が多いと杉窪さんは指摘する。
「都会は生活しやすいと思います。でも、自然や農業は絶対に必要。誰かが農業に携わらなければなりません。
ロンドンやニューヨークでは都市型農業が出てきています。東京でもシティファーマーができるはずです。そう思い、うちでも自家農園を始めました」