小麦を粉ではなく、畑でブレンドする!?

「種種」の種まきが終わった2か月後の2018年12月、杉窪シェフは自分の畑でも小麦の種まきを行なった。

「種種」で余った種のほか、地元の小麦農家にもらった種をまいたのだ。

「ウルトラファーム」と命名した畑の広さは約600坪。そのうちの半分で小麦を育て、2019年6月に収穫。ほぼ同時期、畑の半分で野菜を育て始めた。

農業は独学ではない。「種種」で農業指導をしている「恵泉女学園大学人間社会学部」(多摩市)の澤登早苗教授の農業公開講座を、杉窪シェフは3年前から受講している。

「ウルトラファームは、澤登教授のツテで借りることができました」

澤登早苗教授

そして2019年11月、杉窪シェフの小麦栽培もセカンドシーズンに突入。小雨が降る中、杉窪シェフ以下、8名のスタッフがウルトラファームに集まった。

「昨年収穫した小麦を混ぜたものをまくことにしました。北海道でもいろいろな品種の小麦を混ぜて種まきをする農家もいます。そのほうが製粉した際、味が複雑になります。

粉でブレンドするのではなく、畑でブレンドするという考え方です」

それほど広い畑ではないからこそ、この畑ならではの特性が出せるのではないかという思いもある。

それにしてもパン屋を営みながら、その片手間に小麦を栽培できるものなのだろうか。

「小麦は手がかからないんです。僕らのようにメインの仕事があっても、ほぼ放ったらかしでも栽培できます」

にもかかわらず、毎週水曜日にはスタッフと一緒に畑に足を運ぶ。野菜を栽培しているからだ。

「僕やスタッフ同士が話をしながら、野菜を収穫したり、農業を勉強しています。小麦や野菜と一緒に人材も育てたいと思っています」