芝居は“自分が楽しむ”よりも“客席が楽しむ”もの

撮影:小林裕和

―― では、プライベートの質問を。普段、オフの日はどんなことをしています?

染谷 この前3日間のオフをいただいて、そのときはひとりで温泉旅行に行きました。ひとりで行くのが最高! 友だちといるのももちろん好きなんですけど……僕、ひとりがすごく好きで。ひとり焼肉とかひとり回転寿司とかもしちゃう。

何にも縛られないっていうのが一番いいと思ってて。ひとり温泉旅行なんて、本当に自由じゃないですか! ひとりで露天風呂入ってるときなんか、世界一自由なんじゃないかって思います(笑)。

―― 普段からひとりの時間が必要なタイプなんでしょうか。

染谷 そうかも知れない。別にみんなと一緒にいるのが苦手とかそういうことではないんですけど……。でも、僕は稽古場でも割と、みんなで戯れることもあるけど、スッと外れることが多いかも知れません。ひとりで役作りに没頭したり。

―― 役作りに関しては、頭の中でひとりで作り上げていくスタイルなんでしょうか?

染谷 そうですね。自分で作って稽古場に持っていっても、周囲の芝居と合わせたら違うことになることもあるし……。一応自分の中で決めて行くけど、いざ現場で合わせるときには柔軟に対応できるように意識しています。自分が「こうやるぞ!」って決めて行っちゃうと、相手の演技を受けられないので。

―― 今回の写真集も含め、俳優のお仕事は“自分以外の誰かを演じる”ということですよね。染谷さんは“自分以外の誰かを演じる”のは好きですか?

『月刊 染谷俊之』より 撮影:小林裕和

染谷 自分以外の誰かを演じるのは、好きだと思います。ただ、僕、お芝居をやるときは「楽しんでやっちゃいけない」と思っていて。楽しんでやってしまったら、自己満足になっちゃう気がして。自分が楽しむんじゃなくて、「楽しませなきゃいけない」と思うので……俳優の仕事は好きだけど、“楽しんで”はないかもしれないですね。

あと「あのときの芝居すごく良かったよね!」みたいな話、実は嫌いなんです。いや、もちろんそういう話もしたいけど、それは自分のうちに秘めておけばいい話で。そういうことを話すとき「これは自分が楽しんでしまっているな」って思っちゃうんですよね……。

―― すごくストイックな考え方ですよね。舞台に立っている最中はとにかく客席のことしか考えない、と。

染谷 芝居が終わった後に、振り返ってみて「あの作品楽しかったな」って思えたらいいなと思います。もちろん、お芝居を楽しむ気持ちは常にあるんですけど、楽しみすぎて自己満足にならないように自分を律しているんです。

でも、この価値観が正解だとも思ってなくて……違う芝居に関わった瞬間に価値観が変わるかもしれないし、芝居は本人が楽しまなきゃ意味ないって思う人がいたとして、その価値観も否定しないです。僕の価値観だって、もしかしたら2~3年で変わっているかもしれないし。

フォトギャラリー染谷俊之さん・撮り下ろし!&写真集カットフォトギャラリー(12枚)
  • 撮影:小林裕和
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