ちひろを演じる長澤は前半、生きているのか死んでいるのかわからないくらいの無気力ぶりを見せるが、みつ子に出会ってからは徐々に生気を取り戻していく。
その影と輝きのコントラストが観客を魅了するのだ。みつ子を演じるのは、秋山。大女優としての存在感はあるが、間に差し込まれる笑いが松尾作品ならでは。
また、ヒデヨシというチャーミングな役柄を阿部が表現豊かに動かし、物語を彩っていく。
さらに、ちひろをストーカーのように見つめる奇妙な少年・ジョージを演じた栗原の不思議な存在感、語り部だけではなく別の役でも印象的だった皆川、バスタオルおじさんや英国人演出家役の村杉、劇団員平目川や謎の韓国人ソヨン役の池津、コンビニ店長の妻どてみ役の猫背といった大人計画劇団員たちも強烈な個性を放っていた。
曲数は20曲以上と多く、登場人物のバックボーンが歌詞で綴られる。今回音楽を担当した渡邊崇や、振付を手がけた井手茂太は、どちらも松尾演出の舞台作品に参加するのはこれが初めて。
それ故にこれまでの松尾作品とは少し色合いが変わっている。音楽には沖縄音階を取り入れられており、音の組み合わせや重なり具合が面白さを生み出していた。
本作は悲しみややるせなさを感じる一方で、どこか幸福感やワクワクがエンディングまで続く。
最後には喜劇として着地し、希望の光がふと胸に灯る『フリムンシスターズ』。『キレイ - 神様と待ち合わせした女 -』と同様、名作となるであろう本作をぜひ劇場で見届けてほしい。
【公演詳細】
COCOON PRODUCTION 2020『フリムンシスターズ』
東京公演:10月24日(土)〜11月23日(月・祝)Bunkamura シアターコクーン
大阪公演:11月28日(土)〜12月6日(日)オリックス劇場
ライブ配信日:11月12日(木)17:45 OPEN/18:30 START※20分間途中休憩あり
配信メディア」SPWN(スポーン)/WOWOWメンバーズオンデマンド
上演時間:計3時間30分<1幕1時間35分/2幕1時間35分(途中休憩20分)>
※詳しくは公式HPをご覧ください。