桃田佳世子『風になるまで』(『メタルファイターMIKU』OP)

肉体と運動能力を強化させるパワードスーツ「メタルスーツ」を着用しての「ネオ・プロレス」が大人気エンターテイメントスポーツとして定着している近未来を舞台に、主人公たちがチャンピオンを目指して奮闘する姿を描いた未来派プロレスアニメ『メタルファイターMIKU』は、1994年にテレビ放映された作品。

本作は、特訓やライバル達との闘い、そして、友情を通して描かれる少女たちの成長を物語の基本軸としたストレートな「スポ根」の要素に加えて、メタルスーツというギミックをフル活用してのメカアクションという側面も持つ一風変わったプロレスアニメです。

特筆すべきは、このアニメが深夜枠ではなく、ゴールデンタイムで放送されていた点です。女子プロモチーフのアニメが、ゴールデンでお茶の間に流れていた……つまり、当時の女子プロ人気の高さをうかがい知ることができるわけです。

というのも、当時は全日本女子プロレス(通称"全女"。女子プロ団体ナンバーワンの規模と知名度を誇ったメジャー団体。2005年に解散)を筆頭に、JWPやLLPW(共に全女のライバル的存在だったジャパン女子プロレスが分裂してできた団体)、そして、大仁田厚選手が率いたFMW所属の女子プロレスラーといった各団体、選手が入り乱れての「団体対抗戦」によって、女子プロレスが最高に盛り上がっていた時代。『メタルファイターMIKU』が放映された94年は、その熱が遂に沸点を迎え、全日本女子プロレスが東京ドームでの興行に初進出した年なのです。

そうした時代背景は、本作においても各団体によるチーム対抗戦でチャンピオンへの挑戦者を決定するというストーリーや、男性ファンと女性ファンが混在した客席の描写といった要所要所に刻まれています。

本作は、90年代前半から半ばに掛けての女子プロレスに対する異常な熱狂を今に伝えてくれる一本と言えるでしょう。尚、この作品は『魔法少女まどか☆マギカ』や『ひだまりスケッチ』といったヒット作を世に送り出した新房昭之さんの監督デビュー作としてもアニメファンに知られています。そういった意味でも、様々な面で見どころを持つ作品であり、プロレスファン的にも、アニメファン的にも必見の作品なのです!

オープニングを飾った『風になるまで』は、この時代ならではな正統派のアイドルソングで、90年代のポップス、アイドル歌謡な雰囲気と情緒がタップリな一曲。アニメで、この曲に合わせて展開されるアニメーションも、とにかく素晴らしく見応え十分!

同じく、桃田佳世子さんが歌うエンディング主題歌の『瞳は1000カラット』もアニメや90年代のアイドルが好きならば、その完成度にただただ驚かされる必聴の一曲です。

鳴海杏子『ビューティフル・ドリーマー』(『世界でいちばん強くなりたい!』OP)

『メタルファイターMIKU』が、90年代の女子プロブームを描いた作品ならば、この『世界でいちばん強くなりたい!』は、21世紀に入ってから登場した女子プロアニメ。

国民的アイドルのフロントメンバーだったヒロインの萩原さくらが、ふとしたきっかけから女子プロレスの世界に飛び込み、厳しい試練の数々に何度となく打ちひしがれながらも、それでも"折れない心"とハードな鍛錬の果てに成長と活躍を遂げる姿を描く"ビルドゥングスロマン(成長譚)"的な要素を強く打ち出した正統派のスポ根プロレス作品です。

しかしながら、劇中のバトルシーンは、痛めつけられたヒロインが嬌声を上げる様にスポットライトを当てた"女子プロ"というよりは"キャットファイト"の要素が色濃く(また、アニメ版では人気声優の竹達彩奈さんが主人公を演じ、「アイドル的な人気を持つ女性声優があられもない声を出す」というお色気のニュアンスが強く押し出されていました)、また、キャラクターデザインにもアダルトアニメや『一騎当千』『クイーンズブレイド』といったお色気アニメでの仕事で知られる「りんしん」さんを起用するなど、どちらかというと"エロ"の要素が強い作品でもありました。

とはいえ、本作はプロレス団体の「スターダム」と「プロレスリングZERO1」が制作に協力したことで、ポイントポイントにおいてプロレスの凄みやリアリティをアニメで描くことに成功した作品でもあります。中でも、中盤で描かれる主人公と、ライバルキャラである風間璃緒の"死闘"は、プロレスならではのおもしろさとエキサイティングな高揚感を観る者に伝える本作屈指のハイライトです。

ちなみに、非常にマニアックな視点で恐縮なのですが、プロレス好きな筆者としては、劇中でさくらが行うプッシュアップ(腕立て伏せ)が、新日伝統の「ライオン式プッシュアップ」(両脚のスタンスを大きく広げ、身体を大きくスライドさせる独特なフォームの腕立て伏せ)なのが、とても好きな作品でもあります。

そんな『せかつよ』のオープニング主題歌として使用されたのが、鳴海杏子さんが歌う『ビューティフル・ドリーマー』です。プロレスアニメの主題歌に相応しいドラマティックなメロディを持った一曲で、鳴海さんの高らかな歌声や猛々しい歌詞も相まって、本作の盛り上げに一役を買っています。

こちらも、元気がない時に聴けば、たちどころにテンションを上げてくれる一曲。プロレスマニメにも強く推薦をしたい隠れた名アニソンです!

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。