回復させるには、ストレスを減らすしかない
では、エネルギー不足で不登校になってしまった場合、親はどんな対応をとればいいのでしょうか?
高橋「身体が動かない不登校の状態は、『もうこれ以上ストレスにさらされると、生きられない』と身体が判断しているということ。いわば非常事態です。
適切な対応は、何とかして学校に行かせようとするのではなく、ストレスを減らして子どものエネルギーを回復させることを最優先に考えることです。
親の過干渉が子どもにとってストレスになっていると考えられる場合は、親が、『自分たちが子どもの生きるエネルギーを奪ってきたのだ』という自覚を持つことも重要です」
具体的には、次のような対応が不可欠だといいます。
親の言動を徹底的に見直す
高橋「このタイプの不登校では、親の言動がストレスになっていることが多いので、親は指示、命令、提案はもちろん、自分の意見を言うことや、自分発信のおしゃべりも控えます。
そして、子どもから話してきたときは、しっかり、じっくり聞きます。ただし、そのときも、親が言っていいセリフは、『わかった』『そうなんだ』『無理しなくていいよ』くらいです」
好きなだけ寝かせる
「不登校になると、昼夜逆転の生活になりがちですが、なかには、昼間寝るほうが回復する子も多いので、心配しないでほしいのです。子どもが元気になって『明日は朝起きて◯◯へ行こう』と決めれば、昼夜逆転は1日で直ります」
本人が好きなこと、ワクワクすることをさせる
「たとえゲームであっても、本人がやりたいことを自由にさせてあげると、回復になります。
また、子どもが好きな料理をつくって出すなど、子どもが喜ぶことをしてあげましょう。毎日、子どもを笑わせてあげられたら、回復は早くなるでしょう」
子どもが自分から行動するまで待つ
「子どもがしばらく休んで元気になってくると、親はつい期待して、よけいなプレッシャーを与えがち。でもそこで早まると、元の状態に戻ってしまいます。
子どもが元気になってきたときこそ、早まった言動を慎み、自分から行動するのをゆっくり待ってください」
以上が高橋さんが教える基本的な対応策ですが、不登校の問題はケースバイケース。原因が一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることもあります。
長引きそうなときや親自身の気持ちに不安があるときは、早めに精神科医やカウンセラーなどの専門家、できれば不登校に詳しい先生に相談することも必要でしょう。
強制的に登校させるとどうなる?
ただ、日本では、しつけを重んじる風潮が根強く、子どもの不登校に対して「甘えてるだけ」「根性が足りない」「本人の将来のために、無理にでも学校に行かせるべき」などの意見を耳にすることもあります。
たしかに、子どもが学校に行くのを嫌がったとき、親がそれを許さず、厳しい態度に出れば、「とりあえず不登校を避ける」という意味では有効かもしれません。
しかし高橋さんは、そのような強制的な態度は解決にはつながらないと指摘します。
高橋「これ以上のストレスに耐えられない状態の子どもを精神論で責めたり、強制的に学校に行かせようとしたりすれば、当然ながら、エネルギーはさらに低下します。
親が家庭でそういう態度をとると、子どもが部屋から出てこなくなる、場合によっては家庭内暴力に発展するなど、問題が悪化することもあります。
学校より家庭でのストレスの方が強烈な場合、子どもがへろへろに弱った状態でも登校することはありますが、長くはもちませんので、早晩、再び不登校になるリスクが高いでしょう。
学校は何とか卒業できたとしても、多くの場合、今度は社会のストレスに耐えられず、ニートになる、あるいはうつになるなど、身体が動けない状態を再現することになります」