過激なだけじゃない、青年サンージュストの一面

藤原季節

――藤原さんが演じるのは、革命へとひた走る青年サンージュストです。どんな人物でしょうか。

脚本を読んだ時に思ったのは、過激な思想を持っているということ。

ルイ16世を処刑台に送ることが市民の平等につながる、その一直線な思いで突き進んで、少し浮き足立っていて……というふうに表面的な部分をとらえることは、ホンを読んだ段階で出来ていたんです。

でも稽古をやっていくうちに、その過激さの理由というか、なぜ国王や反革命的な人間たちを次々に処刑台に送っていったのか、時代的背景やその心情を想像するようになりました。

ただ過激なだけじゃないサンージュストの純粋すぎる一面が、稽古を重ねていくうちに見えてきて、そこも演じていて楽しいですね。

――彼の中の“正義”が突っ走ってしまったと。

そうですね。伝説的に有名と言われているサンージュストの演説(編集部注:1792年8月10日の革命後、最年少の25歳で国民公会議員となったサンージュストが国王裁判で行った「処女演説」)があるんですけど、その内容を読むと、すごく説得力があるんですよ。

国王の存在自体が自然の摂理に反している、だから市民が平等になるには国王という存在をまず排除しないといけない……と。一度そういう考えに取り憑かれたら、もう進むしかなかったんだろうなと思います。

稲垣吾郎さんは異次元…目が合うと緊張します

――先ほども「素敵な現場」とおっしゃっていましたが、演出の白井さん、共演の方々との稽古場の様子などを教えてください。

こんなにクリエイティブな空間が生まれるなんて、こんな楽しい現場ってかつてあったかな?と感じるくらい、素敵な現場です。それは白井さんの采配によるものだと思いますね。

稽古初日から全員の名前を覚えてくださっていて、一人ひとりに対して敬意を持って接してくださっているのがわかるんです。

役も立場も関係なく、この場にいる全員が躍動感を持って、この物語を立ち上げていくんだ、っていう空間になっている。それが白井さんの演出なんだなと思います。

――主演の稲垣吾郎さんの印象は?

やっぱり異次元と言いますか、違う空間に立っている方といった緊張感がありますね。

稲垣さんがいらっしゃる時といらっしゃらない時では、稽古場の空気がガラッと変わるので。

しかも稲垣さんって、すごく周りの人のことを見ていらっしゃるんですよ。ホン読みの時とかでも「たまに目が合う」とほかのキャストも言っていました。僕も何度か……(笑)

緊張しますね。これは、僕が子供の頃から見ていた方だから緊張するわけではなく、あの方が持っている“何か”だと思うんですよね。

――死刑執行人なんて、精神的にも肉体的にも、とんでもなく大変なキャラクターに感じます。

そうですよね、サンソンは処刑だけじゃなく、拷問も担当するんですよ。市民に恐れられている存在なんです。

サンソン家についてもいろいろ調べました。フランス革命について調べていくと、本当に面白いんですよ。

議員たちは実際に自分の肉体でもって行動して国を変えようとしていたし、市民たちも自分のこととして国を考え、政治に関わっていた。今の日本とは全然違うなと思いますね。

――観客もさまざまに思い巡らせ、揺さぶられる体験になりそうです。藤原さんが本作で、一番心に響いた部分は?

今、稽古場で見ていて面白いなと感じるのは、ルイ16世とサンソンの悲劇的な関係性でしょうか。

ルイ16世を演じる中村橋之助さんの芝居を見ているのも、すごく勉強になります。

叙情的な声や仕草、そういうものの一つひとつに、橋之助さんご自身の「こういう俳優になりたい」という思いをひしひしと感じて。本当に、いろんな方から刺激を受ける毎日ですね。