これはNG!間違った叱り方
1.否定する叱り方
佐藤「子どもの行動を叱るはずが、いつのまにかその子の性格や気質を非難するような言い方をしてしまうことがあります。
例えば、
・あなたがしっかりしていないからでしょ!
・あなたのせいよ!
・あなたが悪い!
・ダメな子ね
・悪い子はどこかに行っちゃいなさい
などです。
これらは、矛先が『悪い行動』から『悪い子』に移ってしまっていて、起こってしまったこと以上に、誰が悪いのか、責任は誰にあるか、さらには存在の否定にまで及んでいます。
これによるデメリットは、子どもの心に『ママなんか嫌いだ』などの反抗心や『自分はダメな子なんだ』などの自己否定感が生まれてしまうことです。そして、ママ自身も自己嫌悪で落ち込んでしまいがちです」
2.他の子と比較する叱り方
佐藤「幼稚園や公園など、多くの子どもたちが一緒にいる場面では、親はどうしても他の子はできているのに、自分の子はできていないことに目が行きがちです。
それにより、『Aちゃんはできているのに、あなたは全然ダメ』とか、『Bちゃんを見てごらん。ちゃんとしてるでしょ』と、よそのお子さんと比べる形で叱ってしまうことがあります。
また『パパはとっくにできていたぞ』とか『ママは5歳のときには○○だったんだから』と親が自分の幼少時のことと比べて叱ってしまうのも同様です。
親はその子がやる気を出してほしいから、行動を改めてほしいから叱っているのですが、立場を逆転して考えれば明らかで、『他の人のほうが自分よりできる』と言われて、素直にやる気を出せるかと言えば、そんなことはありません。
むしろやる気を削ぐ確率のほうが高く、すねてしまって余計にこじれることが多くなります」
3.叱らない
佐藤「『叱らない』という選択をしてしまうことが問題になることがあります。『叱らない子育て』は魅力的な響きがありますが、自己流にやってしまうと多くの場合、イヤイヤ期や幼稚園期あたりで大きな壁に当たることが多いです。
自己流とは、叱らない子育てをそのまま言葉通りに実践してしまうケースです。
・叱ってしまうのは、のびのび子育てに反しているのではないか
・叱らなくても、いずれ分かってくれるはず
・叱ると子ども心を傷つけてしまう
・何が傷つけ、何が傷つけないのかがあいまい、だから変に叱らないほうがいい
このような心理が働き、親が自分の中で叱らなくていい理由を探し、それを肯定していくことで、叱らない子育てが定着していってしまうのです。
そう言う私も、実は『叱らない子育て』を推奨している一人です。ですが、叱らない子育てには、良い方法と間違った方法があります。
心理学を使った『叱らない子育て』は、ほめの力を使って子どもの行動を伸ばしていくので、『叱らない子育て』というよりは、叱らなくて済む子育てです。起こっている問題に関しては、しっかり働きかけていく点で、“ただ黙認”の叱らない子育てとはまったく異なります。
先ほどお伝えしたような、言葉通りの『叱らない子育て』を取り入れてしまうと、子どもが小学校に上がってからの集団生活で、ちょっと我慢しなくてはいけない、譲らなくてはいけない、待たなくてはいけないというような場面になじめず、本人が困ってしまうことが増えてしまうので、安易に用いないよう注意が必要です」
コロナ禍で子どもとの関係で悩みを抱えるママへ
最後に、コロナ禍のステイホームなどの昨今の状況の中で、子どもとのかかわり方について戸惑うママに向けてメッセージをいただきました。
佐藤「おうち時間が増えたことで、子どもへの接し方のバランスが崩れてしまったという話はよく聞きます。コロナ禍は各家庭、個々人にしわ寄せが来ており、家で担うことが圧倒的に増えていますよね。
そんな状況なので、すべてを思い通りに進めることがむずかしいのは明らかです。あきらめたり、手放すことを学ぶいい機会だとも感じています。そうすることで、ここだけは力を抜きたくないという部分にこだわることが可能になると思います。
そのこだわるポイントとして、私が大事だと感じているのは、『気づいたら甘やかしていた』『いつのまにかルーズになっていた』という部分を極力作らないことです。
もし、おうちの中のルールが“あってないようなもの”になってしまうと、のちのち『手に負えない!』という事態になりがちです。
物理的に子どもとの距離が近くなりがちなコロナ禍だからこそ、『今これをやってあげることは、この子のためかな?』と自問し、年齢に見合った自立行動を身につけられるよう意識していくとコロナ禍明けが安心です」
子どもへの叱り方や関係性について、役立つアドバイスをいただきました。家庭によって悩みはさまざまでしょう。何かヒントをつかみ取って、子どもが良い方向に成長できるよう、取り組みたいですね。
【取材協力】佐藤 めぐみさん
公認心理師 0~10歳のお子さんを持つご家庭向けに育児相談室を運営。子どもの行動改善プログラムや育児ストレスのカウンセリングなどを行っている。英・レスター大学大学院修士号取得/オランダ心理学会認定心理士