教官と生徒の恋愛は「2人に同じ気持ちがあれば」

撮影:小嶋文子

――ちなみに、現実にあんなシチュエーションがあったら、恋愛感情は芽生えると思いますか?

芽生えると思います。よく考えると結構距離も近いですし、2人だけの空間にずっと一緒にいるわけですし。2人に同じ気持ちがあれば、芽生えると思います。

――胸キュンのセリフもたくさんありましたね。

言わせていただきました(笑)。自分だったら絶対に言えないような言葉なので、ぎこちないところもあったかもしれません。だいぶ苦労しました。

©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会

――細かいところなのですが、新谷が佐和子の実家を訪れたときの私服姿が印象的で。教官のときと全然雰囲気が違っていて、かわいいな、と(笑)。

僕もプライベートは少年みたいだなと思いました(笑)。田舎の青年でもあるので、ファッションには疎いんだと思うのですが、衣装合わせのときから、新谷は何から何まで邪念がない人なんだな、と感じました。

©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会

――金子さん自身が印象に残っている場面はどこですか?

佐和子の実家で、全員(佐和子、俊夫、新谷、千佳、真由美)が揃うシーンは印象的でした。僕の隣に(佐和子の母・真由美役の)風吹(ジュン)さんがいて、目の前に佑さんがいて。お母さんはたぶん大体、今の状況を把握していて、それなのに新谷に優しくて。

あとは全体として佐和子と俊夫の夫婦の空気感が好きでした。ひたすら受けに回る俊夫が良いですよね。佐和子が描いている漫画を通していろんなことを知って、汗が止まらなくなってしまったり(笑)。あれは僕でも勘違するだろうな、とか。

俊夫に共感するのはどうだろう?とは思いますが、佑さんが男の心情みたいなものをリアルに演じているので、感情移入してしまいました。人間味があるんですよね。

©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会

――佐和子は新谷に一目ぼれしますが、新谷はいつから佐和子のことを意識していたと思っていましたか?

新谷もたぶん最初に出会ったときから、佐和子に対して何かを感じていたんじゃないかと思っていました。

――初回の教習から新谷は佐和子にとても優しい言葉をかけていますが、その時点からもう意識はしていたと?

気があってあの言葉をかけていたと思うと、わりと恋愛経験が豊富で、落としにかかっているようにも捉えられてしまうので、そう観てはほしくないな、と思いつつも、やっぱり最初からなのではないかと思います。だって、佐和子さんかわいいですよね(笑)。

監督とは特にその気持ちについて話すことはなかったんですが、僕は、あのときには多分恋に落ちていた、と思って演じていました。

撮影:小嶋文子

――佐和子は結婚しているので、不倫ということになりますが、それもわかっていたんでしょうか。

これを言うとまた新谷の印象が悪くなってしまいそうですが(笑)、佐和子にちょっと隙があったんじゃないかと思うんです。さすがに隙が全然なかったら新谷もいかなかったんじゃないかな。今、こうやって話していて、だんだん新谷像が見えてきました(笑)。

――確かに、佐和子は夫の浮気を確信している状態だから、普通の状況ではないですものね。そんな佐和子を演じた黒木さんとの共演はどうでしたか?

とても素敵な方でした。2人きりでお芝居することが多くて、運転もしながらで、しかも自分にはない言葉遣いもしなくてはいけなくて緊張していたんですが、黒木さんが緊張させない雰囲気をつくってくださいました。

好きな漫画やアニメの話をしたり、気さくに、フラットに接していただいたので、すごく演じやすかったです。常に落ち着いて、平常心でいらっしゃったので、僕の方が“先生”と呼びたかったくらい(笑)。映画では新谷がリードしていきますが、実際は逆で、ガチガチの僕を、黒木さんがリードしてくださっていました。

撮影:小嶋文子

――黒木さんを始め、柄本さん、風吹さん、奈緒さんたちとの現場の雰囲気はどうでしたか?

以前から画面越しに観ていた方たちなので、5人が揃うシーンはどんな感じになるのだろう?と、すごく楽しみにしていました。皆さん、フラットな方で、逆に黒木さんと2人きりのシーンよりも少し力を抜いて演じることができました。

スタッフさんも含めて、堀江監督もすごくやわらかい方だったので、そういう空気になったのかな、と思います。

あと、僕は黒木さんやスタッフさんからは“王子”と呼ばれて、いじられていました(笑)。佑さんは“殿”って呼ばれていたんですが、佑さんがお会いした一発目から「王子~!」って来てくださったので、僕も「殿!」と呼んで仲良くなれました(笑)。

佑さんはいろんなことに対して偏見がない、真っ直ぐで純粋な方という印象で、それでいていろんな経験も積んでいるので、人間としても、役者としても深みがあって、大好きになりました。「こういう人になりたいな」と思える方です。

「金子くんはTikTok見る? 俺、最近ずっと見ちゃって、止まらなくて寝れないのよ」と話しかけてきてくださって。まさか俳優・柄本佑から“TikTok”という言葉が出てくるとは思わなかったですし(笑)、さっきも「K-POPにハマってて」と言っていて、そういうところが面白いですし、素敵です。