面白いな、と思える作品をやれたときは、出演シーンが一瞬だったとしても、すごく楽しい

撮影:小嶋文子

――金子さん個人のお話しも少し聞きたいのですが、ことしの前半は舞台に2作連続(『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…』『パンドラの鐘』)で出演されて、新たにMCのお仕事(『ムビきゅん』TBS)も始めていますね。MCは苦手そうだな、と勝手に思っていたので、意外でした。

苦手ですが、一つひとつ苦手を克服していこうと思っています。まだまだなので、(放送は)いい感じに編集していただいています(笑)。

――そうなのですか(笑)。一緒にMCをしている内田真礼さんとのやり取りも面白くて、楽しく観ています。それから、舞台も拝見させていただいたのですが、すごく生き生きとしている印象がありました。

半年間、舞台しかやっていなくて、お芝居づけの日々だったので、生き生きとしていたのかもしれないです(笑)。楽しかったです。でも、すごく難しくもあって。頑張らなきゃ、という想いも強かったです。

――その経験を経て、演技に変化が出ることは?

それが未だにお芝居というものに慣れなくて、舞台、映像に限らず、一つひとつの作品が初めての感覚なんです。毎回、勝負だと思っているので、緊張もしますし、これからもそうでありたい、という想いもあります。

撮影:小嶋文子

――特に舞台はすごく楽しく演技されているように見えたのですが、それだけはではない、と。

もちろん楽しい時期もありますが、今は逆に一つひとつが怖いというか、ちゃんとやらなければ、という想いが強くなっています。

そのときにしかできないお芝居があると思っていて。例えば、過去作のときの芝居を、今できるか?と言われたら、できなくて。ただ、それはレベルが落ちているからか、というと、そういうことでもないんです。

置かれている状況によって、それは仕事でもプライベートでも、たとえ小さなことでも、お芝居って変わってくる。本当に繊細な仕事だな、と思います。

それを一つひとつ忘れたくないんですが、人間って忘れていくものだと思いますし、それを維持することは難しい。そうすると、蓄積ほど怖いものはない、とも思うんです。お芝居は経験を積めば積むほどできるようになるものでもないので、そこは真っ白にしなくてはいけない。

やっぱり舞台を半年もやると、手垢のようなものはついてしまうので、そこは怖いな、と感じています。だからこの半年で得たものはすごく大きかったんですが、今は一旦映像にシフトしています。(映像での)繊細な感情表現だったり、セリフの言い方とかが、(舞台の経験で)少し図太くなってしまっているので(苦笑)。そこは改めて大切にしたいと思っています。

――演じていて、今、楽しいと感じるのはどんな瞬間ですか?

何だろう。難しいですね。何だろう……でも、自分が面白いな、と思える作品をやれたときは、自分の出演シーンが一瞬だったとしても、すごく楽しいと思えます。そこは、自分の作品に対するモチベーションを上げて、どこまで真摯に取り組めるか、にもよるので難しくもありますが。

――面白い、というのは、完成作を観て、感じることですか?

現場でお芝居している時点で、感覚的にわかるものでもあります。このチームでやっていたら、すごくいいものが出来ているんだろうな、って。逆もあります。現場では勢いでやっていて、「どうなるんだろう?」と思っていたものが、良かったということも。

映画『サマーフィルムにのって』(公開中)は、とても楽しい活気ある現場でありつつも、「どうなるんだろう?」と思ったこともあったんですが、結果的に、すごく面白いものになったし、周りからの反応も良くて嬉しいです。

ただ今のところ、現場でいいな、と思っていたものが、完成したらダメだった、という経験はないので、感覚的ではありますが、予想がハズれたことはまだないです。

撮影:小嶋文子

――今おっしゃったことを踏まえて、今後、どんな作品をやってみたい、と思いますか?

そこが難しいんですが、そうやって、やって良かった、楽しかったと、僕も、関わった人みんなも感じた作品が、必ずしもヒットに繋がるとは限らないんですよね。この仕事をしている以上、いくら良い作品であったとしても、結果的にたくさんの方に観ていただきたいので、そういう意味で、パーフェクトな作品に出会えるって、どういう感覚なんだろう、と思います。

ものづくりをしていると、突き詰めて、深く掘り下げていくことで、場合によってはお客さんを置いていってしまうようなこともありますよね。なので、作り手側がやりたいことをやって、それが全部お客さんにも伝わるエンターテインメントは素晴らしいんだろうな、と思います。

――もうすぐお誕生日を迎えて(9月26日)、25歳、二十代も折り返しになりますね。

自分はまたまだだと思いますし、もっともっと頑張らなきゃと思います。映画、ドラマ、舞台といろいろ経験させていただけていることは、僕の基盤になっていると思うので、その基盤を固めながら、一つひとつ上がって行きたいです。


現実か、妄想か……新谷の本当にどちらとも言えない存在感のおかげで、最後の最後、エンドロールが流れる瞬間まで、そして映画が終わったあとも、楽しめる作品となっていました。

金子さん自身は「果たしてあれで女性をキュンとさせられたのか」と照れながら答えていましたが、キュンもしっかりと届けてくれながら、最後までドキドキする展開を演出してくれた金子さんの姿は、ぜひスクリーンでご確認ください。

作品紹介

映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』
2021年9月10日(金)全国ロードショー