簡略化が進むキムチ漬け
恥ずかしながら、私は日常生活のなかで本格的なキムチ漬けをしたことがない。主婦になったことがないからである。
しかし、今どきの主婦が私の母親世代のようなキムチ漬けをしているかというとそうではない。
1970年代まで、お弁当は雑穀米+キムチだけという中高生は珍しくなかったが、韓国もこの20年でかなり豊かになり、食生活はキムチ頼みではなくなった。
つまり、しょっぱさや辛味、酸味がアクセントになり、栄養価も高いキムチでモリモリごはん食べる時代は終わったのだ。2018年の調査によると、白菜キムチの消費量は10年前と比べ23%も減少している。
また、結婚後も働く女性が増え、家事にばかりエネルギーを注いでいられなくなったということもある。
では今どきの主婦は家で食べるキムチをどうしているかとういうと、できあいのキムチで済ませる場合ももちろんあるが、それでは味気ないと思っている人は、チョリムペチュを買ってキムチ漬け作業の負担を軽くしているのである。
チョリムペチュとは塩漬けされた白菜のこと。これがあれば、キムチ漬けの前半の作業が省略でき、薬味作りから始められる。
チョリムペチュは白菜の質にもこだわり、キムチの味のベースになる塩も上質なものを使っている。なかには韓国南西部の干潟で産出される高級な天日塩で漬けたものもある。
自分がろくにキムチを漬けてこなかったのに、こんなことをいうのは勝手なのだが、秋が深まって朝晩の空気が冷たくなってくると、私は母親が漬けたばかりのキムチの味が恋しくなる。
浅漬かりのキムチは酸味がなく、塩味と唐辛子の辛味、ニンニクの香りが立っているので、これだけでごはんが何杯も食べられるのだ。
(つづく)
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