「不安もあるけどここで怖気づいてはいけないと(笑)」(橋本)

上白石萌音 撮影:川野結李歌

──橋本さんは今回が初舞台です。舞台にはどういう思いを持っておられましたか。また、このタイミングで舞台に立つことになったのはなぜだったのか、教えてください。

橋本 これまでも、舞台というものが気持ちの中になかったわけではありませんでした。周りの役者さんで舞台に立っている人は、口を揃えて「舞台は楽しいよ。やったほうがいいよ」おっしゃいますから。

しかもそう言っている顔がみんなイキイキしていて、それを見るたびにそんなに楽しいんだと思っていたんです。

でも、観ている側としてはやっぱり、中途半端な気持ちで立てる場所ではないという思いが大きくて、そんなに簡単に「やりたい!」と言ってできるものではないんだろうと自戒するような気持でいたんですけど、そんなときにこの『千と千尋の神隠し』のお話をいただいて。

これだけみんなから愛されている作品で千尋をやらせていただけるなんて光栄なことだし、こんな機会はないんだから、不安もありましたけど、ここで怖気づいてはけないと(笑)、挑戦しようと思ったんです。

上白石 舞台は楽しいよ(笑)。

──上白石さんは、ジョン・ケアード演出のミュージカル『ナイツ・テイル─騎士物語─』をはじめ、舞台には数多く立っておられます。その「舞台は楽しい」という思いを、詳しく聞かせてください。

上白石 私は舞台が一番好きなんですけど、考える時間も悩む時間もいっぱいあるのがいいなと思っています。1行の台詞に何日も何日も悩めるなんて、こんなに贅沢なことはないなと。

そうやって日々脚本に向き合うことで自分の足りない部分がわかったり、もっとこうしたいという欲が出てきたりもしますし。

もちろん映像の瞬発力の楽しさもあるんですけど、舞台に出るたびにしっかり地に足が着く感覚があるんです。

あと、毎日物語が始まって終わって、全部を生ききれるというのが好きです。しかも、同じ脚本で同じことをやっているのに一度も同じ舞台にならない。本当に生きている、お芝居をしているという感覚を毎日しびれるくらい味わえるのが、たまらなくて。

たまにふっと我に返ったときに、なんでこんなに緊張することをしているんだろうと思うこともあるんですけど(笑)。でもやっぱり舞台は、小さいときから好きで、今も好きで、これからも一番好きだろうなと思っています。