ザック・エフロンが主演したコメディ映画を、世界で初めてミュージカルとして上演する『17 AGAIN』。
この作品で初舞台を踏み、主演を務めるのが竹内涼真だ。
“負け組”としての人生を受け入れていた35歳の主人公マイクがバスケットボールのスター選手だった17歳の頃の姿に戻り、家族の絆を取り戻そうと奮起する様子を、彼はどのように立ち上げるのか──。
昨年11月末に行われた製作発表を経て、カンパニーでの全体稽古に入って約2週間というタイミングで話を聞く機会に恵まれた。
ドラマと演劇は全然違う…一瞬パニックに
──製作発表の前から、歌とダンスの自主トレに励んでこられたそうですね。
ドラマ撮影の合間を縫ってレッスンに取り組んでいました。
そこでベースはできた気がしますけど、実践として吸収できているのはカンパニーでの稽古に入った最近ですね。
初舞台ということもあって「自分がいちばんこの現場で何もできない」状況に置かれています。
──演出を手がける谷賢一さんは、初舞台の竹内さんにどう働きかけてくださっているんでしょうか?
役のこと、場面ごとの感情、観客への届け方……舞台に初めて出演する僕の視座に立って一緒に考えてくださるので、本当にありがたいです。
まだ何も始まっていないし終わってもいないのに、谷さんにはすでに何度も感謝していますね。
──映像と演劇で、お芝居のやり方に違いを感じました?
全然違いますね。これまで映画やドラマでしてきた演技が、舞台だと通用しないことがよくわかりました。
映像だと、セリフは“相手”に伝えるもの。でも舞台の場合、相手だけにセリフを言っても観客の皆さんに届かないんですよ。「いま相手にこんなセリフを伝えています」って状態を見せなきゃいけない。
自分と相手役の方だけで完結させず、観客に届けるための意識も必要だとわかった時には一瞬パニックになりましたね。
──その考え方、谷さんがツイートされていた世阿弥の能楽論「離見の見」ですね。演者が、自分から離れて観客の立場で自身の姿を捉え、演技についても客観的な視点を持つことが大切である、と。谷さんは「立ち稽古初日で“離見の見”が話題に挙がった」とおっしゃっていました。
まさに! でも僕、最近ドラマで客観的に自分を捉えることをやめていたんですよ。
観客の視点を取り入れて演じると、どうしても「こう見られたい」って自意識が入り込む。それってキャラクターを演じる軸がブレてしまうことでもあるんです。だから客観は監督に託そう、って。
ただ、演劇の世界では役者も観客の立場から自分を捉えて表現しないと届かない。
映像におけるお芝居の考え方とまったく違うことに、稽古の早い段階から気づかせてくれた谷さんにはやっぱり頭が上がりません。
──具体的に、どんなシーンを稽古していて気づいたんですか?
驚き、怒り、悲しみ……マイクの感情が大きく動いた瞬間ですね。
映像だったらカメラがアップしてくれるから、表情でその変化を見せられる。たとえば日本人を演じる場合、喜怒哀楽や本音は“隠す”お芝居がリアルなんですよ。
それでもこぼれてしまう瞬間に、ドラマがある。
一方で舞台は映像と違ってカメラに“寄って”もらえないから、体全体で表現する必要があります。でも場数を踏んでいない僕には、まだその引き出しや筋肉が圧倒的に足りなくて。
──演劇におけるお芝居の“筋肉”を、谷さんと二人三脚で鍛えている最中なんでしょうか?
そうですね。たとえば「ここで一度立ち止まってみたら、マイクの悲しみが伝わるんじゃない?」と実際に谷さんに演じていただく場合もあります。
そこからイメージを膨らませる作業を繰り返していくような。
──1ヵ月半後、開幕の時にどれだけ筋肉がつくか楽しみですね!
僕らしく演じるということももちろんですが、まず基本動作を徹底したいですね。そこから自分のスタイルがにじみ出ればいいな、と思っています。