リアルに千秋がいたら、程よい距離感でいたい(笑)

撮影/稲澤朝博

――もし板垣さんの近くに千秋がいたらどうしますか?

僕だったら少し距離を置きますかね。自分で演じていて思うんですけど、千秋ってヤバイ奴だと思うんですよ(笑)。

3話のラストで「大人の都合にいつも巻き込まれてきたんです」って忍に向かって叫ぶんですけど、そういう人のせいにするところとか、そもそも復讐しようとするのも、大人になりきれてないからだと思いますし。

(忍の息子の)悠太なんてまったく関係ないのに、そこもひっくるめて自分の家庭が壊されたように壊してやろうとか。僕はリアルに千秋がいたら、程よい距離感でいたいなって思います(笑)。

©「シジュウカラ」製作委員会

――一方で、そんな千秋を忍に対しては魅力的な人物に見せないといけない一面もあったと思います。その加減はどのように調節していたのですか?

2話で、千秋が漫画の作業中に忍が座っている回転椅子を足で回して自分の方に向けるという場面があるんですけど、その動作ってだいぶすごいことじゃないですか。

それ自体は大九監督の演出だったんですけど、そのときに、そんなことをやられても大丈夫な忍って何をされても大丈夫な人なんだろうな、とも思ったんです。

だから忍に対しての見え方を調整するというのは僕としては特に気にせずに、逆に不気味さというか、「この人、何なんだろう?」って思わせることで忍の中に違和感を残して、橘千秋という人について考えさせることをしました。

その感情がいつの間にかどんどん惹かれていく、みたいな流れだと思ったので。それにもしやり過ぎていたら大九監督が止めてくれるとも思っていたので、僕自身はそんなに気にしてはいなかったです。

撮影/稲澤朝博

――千秋は忍を翻弄したかと思えば、感情をむき出しにして泣き出すとか、感情の振れ幅が大きな人だと思うのですが、その辺りで意識していたことはありますか?

22歳の千秋は自分の情緒を安定させる術を持っていない、というか、そのときに感じたものがそのまま出やすい人だと思っていました。

最初に綿貫家に行って忍の部屋に入ったときも、背負っていたリュックをわざと音を立てて置くんですけど、普通はそういう怒りの感情があったとしても、そんな置き方はしないと思うんです。自分一人の部屋ならわかりますけど、忍もいるんですから。

それができるというのが感情が出やすい人なんだな、と思いましたし、だから、千秋を演じるときは感情がコントロールできていないように、コントロールするっていう感じでした。