28歳の千秋を演じるのは「霧をつかもうとしているかのよう」
――7話(2月18日放送)からは5年の月日が経って、千秋の年齢も22歳から28歳へと変わっています。現在20歳の板垣さんからするとかなり年上の設定でもありますが、演じてみてどうでしたか?
22歳の千秋は複雑さがありながらも個人的にはわりとつかみやすい人間だったのですが、5年後、28歳になった千秋は正直、全然つかめなくて。
22歳のときに忍とのことがあってから5年という月日を経て、まだ彼が漫画家を目指している、ということも、5年の間に誰と出会い何を感じて生きてきたのか、というのも、その間に彼にどういう変化があってどういう人間として生きることにしたのか、というのもつかむのがすごく難しくて。
28歳の千秋の在り方については大九監督と話をさせていただきながら、演じながらつかんでいく感覚が強かったです。それでもまだ霧をつかもうとしているかのようで。それぐらいの難しさがありました。
――大九監督の演出はどうでしたか?
もし監督が大九さんではなかったら、「どんな橘千秋になっていたのだろう?」と思います。僕が考えている2歩、3歩以上先の表現方法を提案してくださるので、毎回刺激的でした。
「こういうシーンで、こういう感情なんだろうけど、こういうアプローチの仕方があったのか!」みたいな感じで勉強になったというか、教えていただけてありがたかったです。
例えば、千秋がバイト先の厨房で同僚と話しながら包丁を研いでいる場面で、本番前のテストをしていたら大九監督から「“殺しましょうか?”って言ってみようか」と言われて(笑)。「殺しましょうか!?」って、言われたときはだいぶ驚きました。
ただそのシーンのあとに千秋が漫画のネームを描いている場面があって、その漫画の中で「殺しましょうか?」ってセリフをタイプするんです。
その描いている場所が家なので、(千秋の母親の)冬子(酒井若菜)に対しての想いにもつながってもいて。それはすごいなって思いました。他にもそういうことがいろいろありました。
――現場の雰囲気はどうでしたか?
山口さんがとても快活で優しい方なので、そのおかげで現場は明るかったです。作品のおどろおどろしいホラーテイストな感じとは真逆の雰囲気だったと思います。
――苦しい感情を抱えているキャラクターですが、プライベートに影響することはなかったですか?
それは全然ないです。僕は家に帰るとパッと役のことは忘れられます。たぶん家に足を踏み入れることが一つのきっかけなのかな、と。
現場や帰り道では若干残っていることもありますけど、家に着いた途端、全くなくなるので、そこが大きなオンオフのスイッチになっているかと思います。