なんでもかんでも誰かのおかげですって言う人は好きじゃない

撮影/友野雄

時にワガママともとられる王子の言動に手を焼きつつ、彼が持てる才能をすべて発揮できるよう舞台裏で奔走するのがプロデューサー・有科香屋子(尾野真千子)だ。どんな天才も、どんなスターも、ひとりでものはつくれない。人の支えが、才能をさらに高くへ羽ばたかせるのだと感じさせてくれる作品でもある。

「作品として見たときに僕の心に残ったのはそっち側だったんですよね。王子だったり瞳(吉岡里帆)だったり、これをやりたいというものがある人のために、支えて動いてくれる人がいる。そこにぐっと来ました。それはきっと僕の中にもそういう経験があったりするからでしょうね。

会社の人間もそうだし、現場の仲間たちもそうだし、別に自分のために動いてくれる。そんな大げさなことじゃなくても、誰かが何かを発して、それに周りが連動すること自体、美しいよなと思います」

撮影/友野雄

だが、それこそ「若いとき」は、その美しさなど感じる余裕もなかった。

「もう自分自分です(笑)。それがいつのタイミングだったか詳しく覚えてないですけど、ひとりじゃ何もできないよなあと思えるようになって。と、同時にこうも感じたんですよ。自分の努力もないとできないよなって」

そう言って、中村は続ける。

「なんでもかんでも誰かのおかげですって言う人は好きじゃないんですよ。嘘つけって、お前が歯食いしばってやってきたからだろうって思う。たぶん日本人的な美意識がそんなに強くない方なんです、僕は。おかげさまでって言葉があんまり言えないタイプなんで(笑)」

耳心地の良い綺麗事だけで語らない。ちょっとひねくれた部分も厭わず見せる。そんなところもまた中村倫也のいとおしさだ。

「本当なら、他人のミスを自分の責任だと捉えて、自分の成功を他人の手柄だと思えたらいいんですけどね。でもそればっかだと、模範解答してんじゃねえよってなっちゃうので、僕みたいな性格の人間は特に(笑)。だから、誰かのおかげも自分のおかげも両方必要なんじゃないかなっていうのは、いつだったか同時に思いましたね」