若い頃は、周りに突っかかることもありました
劇中では、アニメに懸けるさまざまな立場の仕事論が描かれていく。柄本佑演じる鬼プロデューサー・行城理は徹底的な数字主義者。中村もまた人気と共に責任ある役を多く任されるようになり、そこには当然数字や評価がつきまとうようになった。
「ぶっちゃけあんまり気にしてないんですよね。視聴率とか興行収入とか動員数とか、全部あるに越したことないと思ってるし、主演という立場をやらせてもらえるようになってるので、そのへんはもちろん背負わなきゃいけないんですけど。
作品か数字かの二者択一で言えって言われたら、そんなことより現場でみんなが楽しんでる方がいいってなっちゃう。で、理想は二者択一じゃなくて両方やればいいじゃんっていうのが僕の考えです。極論ですけど」
一方、中村演じる王子の仕事論も印象的だ。
「どれだけやろうが納得いかないものを世に出したらおしまいなんだよ」――アニメ放映に向けて周囲が着々と制作準備を進める中、その内容に納得がいかない王子は、そう言ってこれまで積み上げてきたものをひっくり返そうとする。はたから見れば、傍若無人。その一切妥協をしない姿勢は、一緒に働く分には困りものだけれど、どこか憧れる部分もある。
「僕は迷惑かけるタイプじゃないので王子みたいなことはしないですけど、でもなんか若い頃はね、ありましたよ。役者のくせに、この本、もっとこうしたら良くなるんじゃないかみたいに突っかかることも。だから僕のことを嫌いな演出家とかもいっぱいいると思うんですけど。でもそれはそのときの誠意だったんだよね」
それは、今の柔らかくてゆったりとした空気の中村倫也からは想像もつかない姿だ。
「まあそこは大人になりましたよね(笑)。うまく立ち回れるようになったというか。
いつもものづくりをしてて思うのは、意見のすれ違いだったり、ちょっとした衝突だったり、なんやかんやあったとしても、結局みんなが良くしようと思ってやってるっていうのが大前提。そのへんのスポーツマンシップさえあれば、どんなことが現場で起こっても、わりと平気になりましたね。自分のことだけじゃなく」