典型的な平壌冷麺➀(ソウル)

「平壌冷麺」日本人向けの繊細な麺料理だが、安くない……

私の日本の友人知人には蕎麦好きが多い。彼らは韓国に来ると蕎麦粉を使った麺に冷たいスープをかけた平壌冷麺を食べたがる。しかし、約3年ぶりの訪韓でたいていその値段の高さに驚くことになる。

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  • 「抱川メミル冷麺」の周辺は、生活感のある青果市場だが、背後にはタワーマンションが林立し、雨の夜などは映画『ブレードランナー』の世界にひたれる
  • 外観も年季が入っている「抱川メミル冷麺」。地下鉄1号線清凉里駅の1番出入口を出て歩道をそのまま進み、最初の角を右折。100メートルほど行ったところにある5つ目の角を左折した左手にある 
  • 80年代の大衆食堂の雰囲気を残す「抱川メミル冷麺」の店内
  • 「抱川メミル冷麺」のスユク(小)8000ウォン
  • 「抱川メミル冷麺」の特冷麺8000ウォン。普通冷麺は7000ウォン

あらためて調べてみて驚いたのだが、ミシュランに載った「平壌麺屋」(奨忠洞)や「筆洞麺屋」(忠武路)が14000ウォン(約1450円)。日本でも認知度が高い「ウルミルテ」(塩里洞)は15000ウォン(約1540円)。※レートは3月中旬のもの。

老舗の行列店「又来屋」(乙支路4街)に至っては16000ウォン(約1650円)もするのだ。

平壌冷麺が高価なのにはわけがある。まず蕎麦粉が高い。

そして、牛肉や鶏肉などでダシをとった澄んだスープを作るために多くの時間と手間がかかる、などが主な理由だ。

今、朝鮮半島は南北、つまり韓国と北朝鮮に分かれているが、韓国には朝鮮戦争(1950~1953)のときに北から避難してきた人もたくさん住んでいる。平壌冷麺はもともと北側の郷土料理なので、食べたがる人は避難民が多かった。

2000年頃、ソウルの乙支路辺りの平壌冷麺専門店に行くと、北朝鮮訛りでおしゃべりしながら昼酒を飲み、〆に冷麺をすする高齢者をよく見かけた。

しかし、十数年前から韓国にグルメ熱風が吹き始めると、平壌冷麺にも光が当てられ、“その繊細な味わいがわかってこそ食通” のような空気がまん延し、老舗の冷麺店に行列ができるようになった。

それ以前は淡白な平壌冷麺より、甘味と辛味が混然一体となったピビム冷麺のほうが人気があったように思う。

甘味もあるが、かなり辛いソースを麺にからめて食べるピビム冷麺

平壌冷麺の繊細さは、私たち韓国人よりむしろ日本の人のほうが受け入れやすいと思う。刺激の少ない食べものは日本の人のほうがずっと食べ慣れているからだ。

ちなみに私が日本の麺類でいちばん平壌冷麺に近いと思ったのは、京都や大阪で食べた「すだち蕎麦」だ。