思いのほか浮かれてしまう自分
「向こうが既婚者なので、私も深く考えず彼氏がいることは告げていたのですが、打ち合わせが終わったある日、土日に何の予定もないことをふと話題にしたときのことです。
『企画展のチケットがあるのですが、いりますか?』と彼から尋ねられ、思わずうなずいたら明日受け取ることになり、仕事用ではなく個人のメールアカウントを教えてくれました。
ほかの人の目に触れない個人的なやり取りができると思い、うれしくなったのを覚えています。
そのとき気が付いたのは、『私はこの人のことをもっと知りたいと思っていた』ことで、いつも丁寧に私の気持ちや状態を聞いてくれることや、打ち合わせが終わった後は必ず私のもとに来て世間話をしてくれる姿に、ほかの人とは違う感情を持っていたのですよね。
自分の家庭の話をいっさいしないところは気になっていたけど、私が彼氏とのデートを話題にすると楽しそうに相づちを打って『羨ましいな』と返してくれて、そういうところにも親近感を持っていたと思います。
帰宅後、彼から明日の予定について連絡があり、『仕事以外で会うのは初めてで緊張しています』と書かれていてドキッとしました。
打ち合わせのときはそんなことを口にする雰囲気はまったくないのに、個人的なやり取りになると気持ちを伝えてくるのが新鮮で、『お忙しいなかありがとうございます』と返しながら明日着る服について必死に考える自分がいました。
これは恋愛感情なのかどうか、彼氏とのデートとはまた違う高揚感があって、それでも『どうせ向こうは結婚しているし、どうにもならないだろうから』とたかをくくっているところがありましたね……」