厨房に立つお母さんの元気な姿を見られるのが嬉しい

富夫さんが揚げ場に立っていたときとまったく変わっていないこともある。

ご飯を丼に盛るのも、粧由里さんが揚げたかき揚げや天ぷらを沸騰する天つゆにつけるのも富夫さんの妻和子さんの役目だ。

天茂ファンとしては和子さんが、いまも厨房に立っていてくれていることがなによりも嬉しい。

「娘が揚げる天ぷらを長年隣で見てきましたが、最近やっと恥ずかしくない天ぷらを揚げられるようになってきました」

親としては、つい先代と比較してしまうのかもしれない。

【天茂】 天丼。穴子とキス天と野菜天が盛られている。香の物と赤だしがついて1500円


本人もまた、自分の天ぷらを厳しい目で見ているようだ。

「その日の調子にもよりますけど、80点を上げられるのは7~8割ぐらい。これからも精進します」

コロナもあり、昔のように行列ができにくくなった。

粧由里さんが揚げるかき揚げ丼を五感で味わいたければ、開店と同時に入店するといいだろう。

特等席が温かくむかえてくれるはずだ。

【天茂】

【天茂】
住所/東京都港区赤坂3-6-10 第3セイコービル 2F
電話/03-3584-3746
営業時間/11:30~14:00(LO13:50)、18:00~21:00 定休日/土日祝日
夜はおまかせコースで8800円~

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。