けっしてルーヴルでは終わらない話

左から)飯豊まりえ、高橋一生 撮影/映美

――パリではルーヴル美術館をはじめ、名だたる名所での大規模ロケを実施されたそうですね。

高橋 僕がとてもうれしかったことは、(渡辺)一貴監督が日本で撮影しているテイストそのままに撮ってくださったこと。海外の撮影だからとカットを無駄にたくさん撮っていくようなら、一貴さんでも幻滅しちゃうなと思ったのですが、そういったことはまったくなかった。いままで通りに作り込まれて、いままで通りに、サッと終わっていく。

飯豊 そうでしたね。

高橋 これは撮影時間が短いから良いわけではなくて、一貴さんの中で、何かがもう完全に決まっているんです。そのうえで、僕ら俳優をコマとして置いてくれるという、自信の表れなんです。仮に迷ったとしても「本番!」と言った時にはもう、迷いがない。

僕は2016年頃からご一緒していますが(2017年放送の高橋出演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」、ドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズは今作の渡辺監督が演出を担当)、まったく変わっていない。海外だからと、浮き足立っていないんです。

1期が終わったあと、一貴さんとお話しした時に、あまりにドラマの反響が強かったので「なんだか不思議なことが起きていますね」と、お互いに言っていたんです。そんな感覚のなかで、「浮かれないでやりましょう」と言ったことを覚えていて。パリの撮影でも、まさに浮かれていないので、僕は本当に「一貴さん好きー!」と思いました(笑)。

――露伴と泉がパリに行って、どうなるのかは、気になるところです。

高橋 この作品の面白いところは、少し先回りしてお話ししてしまうと、けっしてルーヴルでは終わらない話になっているところです。あるルーツに回帰していく話なので、それがある意味、フランス映画のようであったり、昔の日本映画のようでもあったり。昨今の映画的ではない、たとえばアンドレイ・タルコフスキーのような、不思議な世界観が表現できています。

さらに、それがルーヴル美術館の中で展開し、且つ戻ってきて露伴の根源的な話になっていくまでが描かれるという、よく作られた脚本だな、と思いながら演じていました。今回の映画の色味が欧米的ではないところがあるので、起承転結もどこか軸がずれていて、作品としてアーティなものになっている印象です。