ヘーゼルナッツやシナモンを使ったカヌレも

【LE TREIZE】 左からカヌレ ド ボルドー、ショコラノワゼッティーヌ、カネル

『ル トレーズ』では「カヌレ ド ボルドー」の他、「ショコラノワゼッティーヌ」(450円)と「カネル」(420円)の、計3種類のカヌレを作っている。

【LE TREIZE】 ショコラノワゼッティーヌに使っているピエモンテ産ヘーゼルナッツ

ピエモンテ産ヘーゼルナッツとフランス産ミルクチョコレートを入れて焼いたのが、「ショコラ  ノワゼッティーヌ」だ。

「生地をある程度焼き上げた後、細かく砕いたヘーゼルナッツとミルクチョコレートを入れて、それぞれの味と風味が生きるように作っています」

戸谷シェフ自身、ヘーゼルナッツとチョコレートの香り豊かなこのカヌレが大好きだそうだ。

ローストしたヘーゼルナッツがカリカリで香ばしい。コリコリカリカリ。噛むときの音が愉快だ。

「『カネル』はオーガニックのシナモンを使っていて、甘さとスパイシーさもあります」

シナモンの香りがするカヌレは初体験。カヌレ好きなら食べてみたい。

【LE TREIZE】 カヌレ ド ボルドー(左)と、フィナンシェ デラブル

カウンターには3種類のカヌレの他、「フィナンシェ デラブル」(350円)が並んでいる。

カヌレ専門店がなぜフィナンシェを焼くのか。

「フィナンシェを焼く理由をお伝えする前に、ボルドーでカヌレが誕生した経緯を説明させてください」

ボルドーは赤ワインの一大産地。その赤ワインの澱を除くために泡立てた卵白が使われていた。

卵黄が大量に残る。余った卵黄を活用するためにカヌレが誕生したと言われている。

【LE TREIZE】 カヌレには卵黄しか使わないため、卵白が余る。その卵白でフィナンシェを作ることに

一方、ワインを醸していない『ル トレーズ』では、カヌレを作ると卵白が余る。

残った卵白でフィナンシェを作ることにしたというのだ。

「パティシエには食材を余すことなく使う発想が求められます。バランス感覚というか、それがお菓子作りの基本ですね」

フィナンシェには、カナダ産メイプルシロップを使用。コクのある自然の甘みをもたせた。

クルミのような細長い形のピーカンナッツを散らすことで香ばしさを演出。

甘みがくどくないだけでなく、コリコリとしたピーカンナッツの歯ざわりもいい。

3種類のカヌレを食べ比べ、フィナンシェも味わうことでストーリーが完結するのも面白い。

【LE TREIZE】 ソフトクリームのコーンカップにカヌレがのっかっているのだと思っていたけど。じつはエッフェル塔だった

最後に『ル トレーズ』のマークについて戸谷シェフに話を聞いた。

ソフトクリームのコーンカップにカヌレがのっているのかと思ったらそうではなかった。

「エッフェル塔です。修業時代、カヌレを買っていたパリの『ルモワン』から見えたエッフェル塔が印象的でした。カヌレはボルドーの伝統菓子ですが、私にとってはパリの『ルモワン』なんです(笑)」


【LE TREIZE(ル トレーズ)】

住所/東京都港区白金1-2-1ザ・スカイ E104
電話/03-5447-0130
営業時間/9:00~19:00
定休日/月曜(祝日の場合翌日)
※電話で予約可

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。