アン・ボヒョン 写真提供:マイデイリー

ヒット作『梨泰院クラス』でパク・ソジュン演じる主人公が復讐を誓うきっかけとなった悪役でブレイクしたアン・ボヒョン。あれから3年、着実に俳優として成長を見せている。’23年は前年に続いて来日イベントも行われ、ファンの熱い歓迎を受けた。『軍検事ドーベルマン』は今やトップスターとなった彼の魅力が詰まったドラマ。本作を紹介する前に、アン・ボヒョンについてまず簡単に紹介していきたい。

1988年生まれで、幼少期から背が高く体格が良かったことから、多くの運動部からスカウトを受け、中・高生時代はボクシングに打ち込んだ。釜山代表となって全国大会で入賞もしたが、職業としてボクシングを続ける気持ちはなかったそうで、高校卒業後は周囲から勧められて、大学のモデル学科に進学。すると、’07年に早くもソウルコレクションの舞台に立ち、ファッションモデルとして頭角を現した。

その後、演技に挑戦したいという思いが大きくなり、俳優への転身を決心。演技学校に通いながら努力を重ねた。そうした日々を経て、’14年に『ゴールデンクロス』でデビュー。翌年の『最高の恋人』に続いて、’16年の大ヒット作『太陽の末裔〜Love Under The Sun〜』で軍人役に選ばれて、鍛え上げられた美ボディに注目が集まった。‘17年には日韓合作映画『デッドエンドの思い出』の名古屋ロケに参加し、スヨン(少女時代)の元カレ役を好演。

こうして着実に実績を積み、『かくれんぼ』(’18)、『彼女の私生活』(’19)では準主役を任されるまでになった。そして、前出の『梨泰院クラス』で’20年に大きく飛躍して以降『カイロス〜運命を変える1分〜』『ユミの細胞たち』『マイネーム:偽りと復讐』と次々話題作に出演し、認知度をぐんと高めた。そんな彼が初主演を飾ったのが、異色の法廷アクション『軍検事ドーベルマン』だ。

『軍検事ドーベルマン ©STUDIO DRAGON CORPORATION

金に目がない弁護士ド・ベマンは、大手ローファーム代表ヨン・ムングにスカウトされ、彼の指示で軍直属の検事となる。任期終了間近、新任の同僚チャ・ウインが、軍需産業会社会長ノ・テナムの悪行を容赦なく暴き、自ら体を張って逮捕したのを目の当たりにしたベマンは、彼女の正体を調べ始める。ウインの父は、テナムの母で陸軍幹部のファヨンとムングらの陰謀で命を落としていた。さらに、軍人だった両親の死にも関わりがあったことを知らされたベマンは、復讐を誓うウインに協力し、狩猟犬となることを決意する。

『軍検事ドーベルマン ©STUDIO DRAGON CORPORATION

アン・ボヒョンが演じたのは、獲物に食いついたら絶対に放さないドーベルマンのような型破りな軍検事ド・ベマン。女性検事チャ・ウインとともに、軍組織の不正を暴き、隠された真実に迫っていく様子が爽快感たっぷりに描かれる。面白いのは、ベマンが最初は正義よりも依頼人の利益を優先する拝金主義者の弁護士という点。権力の手先だった彼が、両親の死の真相を知ったことで変わっていく姿が大きな見どころとなっている。ウイン演じるチョ・ボアとの息の合った演技も見もの。

『軍検事ドーベルマン ©STUDIO DRAGON CORPORATION
『軍検事ドーベルマン ©STUDIO DRAGON CORPORATION
『軍検事ドーベルマン ©STUDIO DRAGON CORPORATION

また、個性あふれる悪役たちもドラマを盛り上げた。久々にドラマ復帰したオ・ヨンスが冷徹な軍人ファヨン役で存在感を示し、『愛の不時着』などで知られる名脇役キム・ヨンミンがムングに扮し、計算高い小悪党ぶりを好演した。さらに注目したいのが、『禁婚令 -朝鮮婚姻禁止令-』で注目を浴びる、テナムを演じたキム・ウソク。救いようのないクズ男に思われた彼の、複雑な背景と心情が明らかになるにつれて、彼の変化も描かれて興味を引く。

『軍検事ドーベルマン ©STUDIO DRAGON CORPORATION

最も痛快なのはベマンとウインが、時には強引な手で敵を打ち負かし、復讐を遂げていく姿だ。打たれ強く生命力にあふれたベマンは、大らかな雰囲気のアン・ボヒョンにぴったりの役。監督が真っ先に彼を思い浮かべたというだけあって、これ以上ない似合いのキャラクターを生き生きと演じている。権力者の悪を許さないベマンの活躍を通して、彼の魅力を堪能したい。

『軍検事ドーベルマン』
DVD-BOX1:2023年12月6日(水)発売
DVD-BOX2:2024年1月10日(水)発売
Vol.1-8:2023年12月6日(水)レンタルリリース
Vol.9-16:2024年1月12日(金)レンタルリリース
各BOX 本体価格¥18,000(税別)
発売元:KADOKAWA Kプラス
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©STUDIO DRAGON CORPORATION

『韓流ぴあ』ブレーンライター。香港映画から始まって韓国エンターテイメントの魅力に目覚めて20数年。ドラマをはじめとする韓国エンタメについて取材・執筆する日々の中、韓国作品のほかに中国時代劇や台湾作品に割く時間が増加中。

「韓流ぴあ」更新情報が受け取れます