数学というと公式や計算などを思い浮かべる人も多く、そのため「解は一つ」、「機械的」と捉える方も多いでしょう。

長年、数学教育に携わってきた植野義明先生は、「子どもたちは、生まれながらに身のまわりで起こる現象の中で、『3』までの小さな数を知覚し、それをもとに判断する力を本来、もっています」と話します。

数への感性を持って生まれる子どもたちは、それぞれの年齢に応じて、その子どもだけの「数学の世界」を心の中に作り、少しずつ広げていきます。

そうした生まれながらもっている能力を礎に、子どもたちは考える力を大きく羽ばたかせていくようになるのです。

まして現代の子どもたちは、今まで以上に数学力が大切になってくる社会で生きることになるでしょう。

子どもが持つ「数学の世界」を伸ばすには、親の言葉がけや興味の持たせ方が大切になってきます。それでは親としてどのような働きかけをしていけばよいのでしょうか。


ここでは2~6歳のときにやっておきたい、話しかけ方のヒントについて、書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』からご紹介します。

植野先生の主宰するくにたち数学クラブでは、機械的に解き方を受け入れるのではなく、自ら納得して数学力を高めることを目的としています。子どもの心を耕す言葉がけも幼児クラスでの実践を通して、その確かな効力が認められたものばかりです。

1:「数への興味」が育つ言葉がけ

毎日の生活の中で、食事のときの会話や、お出かけ前の持ち物チェックなど、数や計算への興味を引き出す場面は、たくさんあります。

目に触れるいろいろなものやことに興味をもつ幼児にとって、視覚、聴覚、触覚などさまざまな感覚を通して、数への興味や数の量としての感覚を育てておくことは生涯の糧となるはずです。

「『半分』は『2分の1』とも言うんだよ」

小学校の高学年で習う分数。幼児に教えるのは、まだ早すぎるのではないかと思われがちですが、2分の1や3分の1のような簡単な分数は、実は、日常的な会話の中でもよく使われています。

子どもが「半分」という言葉を覚えたときが、分数の意味を教えるチャンスです。例えば、台所で調理をしながら、「『半分』のことを『2分の1』とも言うんだよ」と言ってあげます。わかりやすく説明すると、子どもはすぐに理解します。

出典(子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ

ホールケーキやピザ、ホットケーキなど丸いものを等分するときが絶好の機会。子どもはビジュアルで2分の1や4分の1の意味を感じることができます。

2:「形への関心」が育つ言葉がけ

「数」と「形」は小学校算数の基礎。「形への関心もまた生まれながらのもの」と植野先生。

子どもにとって、いちばん身近な形はマル、サンカク、シカクです。

子育ての時間を利用して、親子でいっしょに図形感覚を伸ばす機会にしてしまいましょう。

「丸いものを探してもってきて」

子どもは、自分で曲線や直線を描けるようになる前から、身のまわりにあるマル、サンカク、シカクといった形を認識することができます。身のまわりのいろいろな形を認識することから形の感覚を育てていきます。

子どもに折り紙を見せて、「これは四角だね」と言葉がけをします。次に、それを半分に折って、「ほら、こうするとお山の形の三角ができたよ」と言ってみましょう。四角い折り紙を半分に折ると三角ができることは、はじめての子どもにとっては新しい発見です。

丸いものには、ボタンやビンのフタ、おはじきやビー玉、おもちゃの車輪などがあります。いろいろな種類の形にだんだんと慣れてきたら、「丸いものを探してもってきて」などと言葉がけをし、部屋にある物の中から形を見つける「探検ごっこ」をします。出典(子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ)

この遊びをするときは、お皿やコップなど、割れるものは片づけておきましょう。形についても、親が教え込むのではなく、自然な会話の中で図形が見せてくれるいろいろな側面を子どもといっしょに楽しむのがコツです。