元彼が取った対応
元彼に連絡する専用の端末を手に入れたAさんの選択は、どんな結末を迎えたのでしょうか。
「ある日曜日の午後に初めて彼の番号にかけたのですが、出てもらえませんでした。
でもそれは『知らない番号から着信があったら、すぐに出ないで調べる』と話していたのを思い出して、仕方ないと思いました」
留守番電話に切り替わったけれど「私と知られたらまた拒否されるかもしれない」と思い、メッセージは残さずに切ったそうです。
その後は、「次の週の水曜日にもう一度かけたけどやっぱり応答はなくて、次は土曜日の午後にまた電話しました」と、いつか元彼が着信を取ってくれることを願いながら、かけ続けたそうです。
「もしもし」
やっとつながったのは、二週間後のことでした。
「あ、もしもし、私だけど」
突然流れてきた元彼の声に、Aさんは「胸が弾むような心地がした」といいます。
「え、◯◯?」
元彼が不審そうな声で返してくるのを、
「そう、私。突然ごめんなさい、どうしても話したくて」
と、勢い込んで話すAさんに対して、
「……」
元彼は黙り込みます。
「もしもし?」
無言になった元彼に不安になってAさんが呼びかけると、
「何の用?」
と、低い声が返ってきました。
「あの、別れたときにちゃんと話せなかったから……」
謝ろう、そう思っていたAさんは、元彼と話せるようになったら考えていた言葉を浮かべます。
ところが、
「ここまでする?」
元彼の返事は、明らかに自分を非難する響きがありました。
「……」
不穏な気配に、今度は自分が黙る側になったAさんに向かって、
「もう本当にそういうところが怖い。
二度とかけてこないで。次に連絡してきたら、警察に通報するから」
元彼は、きっぱりとした口調で言い放ちます。
「この会話は録音しているから、と言われました。
そこまでするんだと、自分が今どう思われているか、一気に目が覚めたようで」
「……」
絶句しているAさんに、
「非常識だよね、本当に怖い」
という元彼の言葉が流れてきて、通話は切られます。