『木更津キャッツアイ』はのちに映画化

宮藤官九郎の実力を遺憾なく発揮したのが、2002年1~3月期に放送された『木更津キャッツアイ』だ。主演はV6の岡田准一。キャッアイのメンバーとして、嵐の櫻井翔も出演していた。

岡田准一は田村正和が主演した日曜劇場の『オヤジぃ。』などにも出演していたので、すでにドラマファンにも知られていたが、櫻井翔はこの作品で嵐ファン以外の人にも顔を覚えられたんじゃないだろうか。当時、嵐はまだ結成2年目で、深夜に「真夜中の嵐」という番組をやっていた頃だった。

『木更津キャッツアイ』は、野球の試合のように表と裏に分けたストーリーの見せ方、登場人物たちのキャラクター、実在する木更津という町の見せ方など、そのすべてが面白かった。そして、その面白さの中に、地方都市に住む若者たちの青春がせつなく描かれていた。

平均視聴率は10.1%と低かったが、いい作品はあとから評価されるもので、のちに発売されたDVDが大ヒット。それを機に、2003年には映画『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』が、2006年には映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』が制作された。
 

そして、2003年10~12月期に放送されたのが『マンハッタンラブストーリー』。主演はTOKIOの松岡昌宏で、無口な喫茶店の店長を演じていた。ほぼ全編に渡ってセリフはナレーションだったが、渋い純喫茶のマスターになりたいと思いつつ、常連客たちの複雑な恋愛の渦に巻き込まれていく姿は、まさに新たな一面を見た思いだった。

この作品は、登場人物の名前の頭文字がA、B、C、D……となっていて、A→B→C→Dという片思いが連鎖していく形でストーリーが進行した。もちろん、クドカンの脚本なので、後半からいろいろ仕掛けがあって、飽きさせない展開になっていた。

ドタバタのコントのように見えて、じつはグッと来るラブストーリーになっているというのもクドカンの真骨頂。ところが、平均視聴率は7.2%とびっくりするくらい低く、宮藤官九郎の作品を面白いと感じる人はこんなにも少なかったのかと、クドカンファンが痛感した作品でもあった。