大人でも楽しめる青春学園コメディ

そして、『うぬぼれ刑事』から4年ぶりに放送されているクドカン×ジャニーズ作品が、今期の『ごめんね青春!』だ。高校を舞台にした学園コメディで、主人公の国語教師・平助が錦戸亮。生徒役でジャニーズWESTの重岡大毅も出演している。

仏教系の男子校(東高)とカトリック系の女子校(三女)の合併・共学化がストーリーの軸になっているこのドラマは、主人公の平助やヒロイン役の英語教師・りさ(満島ひかり)も同じ男子校・女子校出身というところが大きなポイントになっている。

つまり、現代の高校生だけでなく、かつて高校生だった大人たちの青春に対する後悔やせつない感情も同時に描いているということだ。放送開始前は『ごめんね青春!』というタイトルにややパンチの弱さを感じていたけど、見続けていると、とくに大人たちにじわじわ来るタイトルになっている。

錦戸亮が演じる平助は、高校生だった14年前、親友と好きだった三女の生徒に裏切られた経験があり、自分が放ったロケット花火で三女の礼拝堂を燃やしてしまったと思っている男。教師になった今もそのことを引きずっている情けないところもあるが、自分の青春にきっちりと落とし前をつけなくてはならないと思っている意思もある。

錦戸亮のキャスティングは宮藤官九郎の希望だったらしいが、その情けない部分や、自分の過去を踏まえて生徒たちにやさしく諭す話し方など、かなり役に合っていると思う。

他の出演者では、満島ひかりもいいのだが、平助が好きだった三女の生徒であり、りさ(満島ひかり)の姉でもある祐子を演じている波留がいい。平助の告白を受けながらも、平助の親友であるサトシ(永山絢斗)と付き合おうとした祐子の行動と、波留が醸し出す雰囲気のギャップが、とくに元・男子高生には何とも言えない魅力として写っているはずだ。

『あまちゃん』はNHKの朝ドラなので、当然、三陸という明確な舞台があったのだが、クドカン×ジャニーズドラマでも、『I.W.G.P』の池袋、『木更津キャッツアイ』の木更津などは舞台となる街がハッキリとしていて、宮藤官九郎はその街を魅力的に描いてきた。その切り口で言うと、今回の『ごめんね青春!』は静岡県の三島が舞台だ。5話までの間にも、伊豆箱根鉄道駿豆線、伊豆・三津シーパラダイス、みしまコロッケ、みしまるくんなど、実在の施設やアイテムを登場させて、リアル感を出している。

このリアル感に関しては、3話であまりにもリアル過ぎる学校名を出してしまって、公式に番組サイドが謝罪するという出来事もあった。TBSでは平日の昼間に1話から再放送をしていたのだが、当然のことながらその部分はバッサリと切られていた。まあ、こういう危ないセリフは、これまでのクドカン作品にもチラホラあったりはするんだけど……。

とにかく、低空飛行の視聴率だけでなく、そんなマイナスな話題でも各所で取り上げられてしまっている『ごめんね青春!』。それでもやはり、クドカン×ジャニーズのドラマには、他では見られない魅力がある。先入観を取り除いて、もう一度素直な気持ちでこの作品を見てみてはいかが?

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。