パパにもサポートを!

「子育てで一番大切なことは、ママ=子育てをする人が幸せでいることです」と言う豪田トモさん。でもママのサポートをするパパにも、実はサポートが必要だと言います。

「ママが幸せな育児をするためには、パパを中心とした様々なサポートが絶対必要です。でもそのサポートをするパパは、最初はママ以上にどうしていいのかわからないんです。
妊娠期間を一緒に過ごす、出産に立ち会う、がんばって育休を取る、育休が取れなければ土日で何とか子どもと向き合うとか、そうやって自ら育児に積極的に関わっていかないと、どうしても育児の大変さはわからないし、父親の実感が持てないんですよね。
でもその関わり方もきっかけもわからないパパが多いので、そのようなパパにスイッチが入るようなサポートをしてもらうことで、ママもより良いサポートが得られるような気がします」
 

「大切な我が子、どうやって育てていいかわからなかった」

企画や撮影も自ら行うという、豪田トモ監督

2010年『うまれる』の公開直後に、初めてのお子さんを授かった豪田トモさん。豪田さん自身も、どうやって父親になればいいのかわからず、そのことが今回の映画『うまれる ずっと、いっしょ。』を撮るきっかけになったそうです。

「4年前、前作『うまれる』の公開10日後に娘の詩草(しぐさ)が生まれて、父親になりました。もともと、ぼくは妊娠・出産・育児にはまるで興味のない男性でしたが(笑)、『うまれる』の映画作りを通して、子供が生まれるってことがどれくらいすごいことなのか心からわかるようになりました。
ですから生まれてきた目の前の命=詩草を何とかして幸せに育てたいと思った。でも、どうしたらこの子を幸せにできるのかわからない。そもそも父親って何? 家族って何? という疑問が次々と浮かび、その悩みを解決したい、というとても個人的な理由がきっかけで映画を作り始めました」
 

「理想の父親像が描けない」

待ち望んで生まれた子供。でも、どうやって父親業をやっていけばいいか、全くわからなかったと言う豪田トモさん。

「実はぼくは、30年以上、両親との関係がよくなかったんです。だから理想の父親像とか、家族のモデル像といったものが自分の頭の中になくて、自分が父親になるのが怖かったんです。幸せな家庭を築く自信が全くなかった」

前作『うまれる』の製作を通して、様々な家庭の命が生まれ、育っていく場面に出会い、100組以上の家族を取材するうちに豪田さんに変化が訪れます。

「ああ、こうやって自分も生まれてきたんだなあ、と親に対する感謝の気持ちが芽生えてきたんです。そしてあまりきちんとしたコミュニケーションを取れてなかった親に感謝の気持ちを伝えることができるようになり、親との関係が劇的に改善したんですね。両親との間にあった厚い氷が溶けると、不思議と“父親になりたい”って思えるようになったんです。

「でも“生物学的な親になる”ことと“わが子を幸せにできる父親になる”ことは、まったく別もの。その心の探求の記録が、今回の映画『うまれる ずっと、いっしょ。』になりました」