主な改正ポイント3つ
1.拠出限度額の引き上げ
改正により、年間の拠出限度額が引き上げられ、より多くの資金を積み立てることが可能になります。これにより、老後の資金準備が一層充実します。
働き方やライフコースが多様化する中で、勤務先の企業年金制度の有無や形態に関わらず、公平で安定的な資産形成の助けとなるように、以下のように拠出限度額が引き上げられました。
被保険者区分
第1号被保険者(自営業者等):改正前(月額)6.8万円、改正後(月額)7.5万円
第2号被保険者(企業年金なし):改正前(月額)2.3万円、改正後(月額)6.2万円
第2号被保険者(企業年金あり):改正前(月額)2.0万円または2.3万円、改正後(月額)6.2万円(企業年金の掛金相当額を控除)
2.企業型確定拠出年金のマッチング拠出要件の見直し
企業型DCにおけるマッチング拠出について、従来は「加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えることができない」とする要件がありましたが、この要件が廃止されました。
これにより、加入者が事業主掛金を上回る額を拠出することが可能となりました。
勤務先の企業型DCに加入されている方で、掛金を今より多く増やしたい場合は担当部署に確認しましょう。iDeCoに加入されている方で掛金の拠出額を上げたい場合は、ご自身で手続きをすることになります。
3.退職所得控除の適用要件の見直し
iDeCoの一時金と退職金を受け取る際の退職所得控除の適用について、従来は5年以上の間隔が必要でしたが、改正により10年以上の間隔が必要となりました。
これにより、iDeCoの一時金と退職金を受け取るタイミングによっては、税負担が増加する可能性があります。
改正によるメリットと注意点
改正によりメリットもありますが、気を付けなければいけない注意点もあります。
改正によるメリット
拠出限度額が引き上がることで、節税メリットを活かしながらより多くの資金を運用して老後に備えることができるようになりました。
長い期間、節税メリットを活かしながらうまく運用できれば、老後の選択肢を増やすことができます。
注意点
今回の改正で職所得控除の適用要件が厳しくなったため、iDeCoの給付を一時金として受け取る場合、受取時の課税に注意が必要です。また、iDeCoは原則として60歳まで資金を引き出すことができないため、長期的な資金計画が必要です。
そして、運用は自己責任で行われるため、運用成績によっては元本割れのリスクもあります。
確定拠出年金制度は、令和7年度の改正によって、人生100年時代の資産形成にいっそう役立つ制度へと進化しました。ただし、メリットだけでなく、制度の性質や注意点も理解して、自分の生活に合った形で賢く使うことが大切です。
「何から始めたらいいかわからない」という方は、まずはご自身の勤務先の制度や加入状況を確認し、必要であればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみると安心です。
【執筆者プロフィール】田端 沙織(たばた さおり)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー/J-FLEC認定アドバイザー
神奈川県鎌倉市出身、プライベートでは小中学生3人の子育て中でもあるお金教育の専門家。得意分野は資産運用。
~キッズ・マネー・ステーションとは~
「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。



















