ミュージカル『サリエル』©HJ CULTURE

今年3月に東京・シネマート新宿にて行われ、好評を博した上映イベントが再び、「K ミュージカルシネマ『サリエル』記録上映会」(韓流ぴあ主催)として大阪と東京にて全5回で上映されます。韓国ミュージカルファンの心をつかんだ秀作『サリエル』。上映会までに同作の魅力を数回に渡ってリレーエッセイでご紹介します。

話題の“ライブビューイング”形式で、本場の臨場感を手軽に味わう

例えばメトロポリタン歌劇場が世界に発信している「METライブビューイング」、劇団☆新感線の人気作を楽しめる「ゲキ×シネ」、名作が目白押しの「シネマ歌舞伎」。あるいは最近では、ロンドン発の『ビリー・エリオット』、2.5次元ミュージカルのトップランナー『テニスの王子様』、ももいろクローバーZが主演した『幕が上がる』……と、多岐にわたる舞台公演が、“ライブビューイング”として映画館で上映されている。ここ10年余りで勢いを増している同形態が、満を持して韓国ミュージカルにもお目見え! “ミュージカルシネマ”と銘打った試みの、記念すべき第1弾に選ばれた作品こそ、2014年に初演された創作ミュージカル『サリエル』です 

字幕で理解度アップ&オペラグラス×10倍効果

天才モーツァルトの才能に嫉妬する宮廷作曲家サリエルの半生を、“ジェラス”というミステリアスな存在を絡めて描いた衝撃作。ピーター・シェーファーによる戯曲『アマデウス』はもとより、同時代を扱ったミュージカル『モーツァルト!』のヒットも相まって、韓国語に明るくない観客にも親しみやすい題材。……とは言え、何よりうれしいのは、“ミュージカルシネマ”では本編が日本語字幕付きで上映されること。

ドラマチックな音楽性や、実力派俳優の抜きん出た歌唱力だけでも十分に楽しめるのが韓国ミュージカルの醍醐味ではあるものの、歌詞やセリフの深部まで理解できれば感動が倍増するのは言わずもがな。3月の日本初上映会では、苦悩するサリエル、彼を陰で操るジェラス、奔放なモーツァルト……それぞれの想いがヒシヒシと伝わってきたからこそか、客席からは、すすり泣きと万雷の拍手の音が響いたのが印象的でした。

加えて、俳優が放つ一瞬の表情など細部をズームアップした映像が、スクリーンに映し出された時の迫力たるや、オペラグラスをのぞいた時の比にあらず。通常、劇場の後方席からはうかがい知ることができない目の動き、涙や汗までも感じられ、作品の新たな魅力を発見することにつながった。実際、本作でジェラス役を好演し、3月の上映会にゲスト出演した俳優チョ・ヒョンギュンの、「役者の表情をクリアに伝えることができる」というコメントからも、お墨付きです。

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