警察庁と内閣府が発表した2014年の自殺者数は2万5427人。
昨年と比べると1856人減少しており、5年連続の減少に。

ただ、男女の内訳で見てみると、男性が1万7386人で、女性が8041人。相変わらず男性の方が圧倒的に多く、女性の2倍以上となっています。

また、昨年発表された「男女共同参画白書」(内閣府男女共同参画局)によると、「いま幸せか?」という問いに対して、女性は34.8%が「はい」と答えました。しかし、男性は28.1%と低く、ここでも女性より男性の方が生きにくいことがわかります。

今回は男性の自殺率の高さの裏側に潜む「男性の生きにくさ」について、武蔵野大学社会学部助教・田中俊之さんの著書『男がつらいよ』を参考に考えていきたいと思います。特に、おつきあいしている男性や、結婚されている旦那さんがいらっしゃる読者は、自分のパートナーも「生きにくさ」を背負っているということを、どうかご理解いただければと思います。

なぜ男性が「生きにくい」のか

では、さっそくですが、男性の生きにくさの根幹にあるものについて考えてみましょう。それは「競争」です。

男性は小さな時から競争の宿命を背負っていると言えるのです。受験や就職活動など、男女問わずに競争はつきものですが、男性の場合は子どもの時からこれを意識しているのです。

その例の一つとして、将来、就きたい仕事があります。
男の子たちに将来の職業を聞くと、その上位は社会的地位の高い職業ばかり。もし、本当にその職業に就くならば、いくつもの競争に勝っていく必要があります。

クラレが毎年行っている調査によると(子ども4,000名、男女各2,000名)、小学校新1年生が将来就きたい職業で、男の子の1位は「スポーツ選手」。続いて2位は「警察官」、3位は「運転士・運転手」です。
その他にも、パイロットや医師も上位に入っています。確かにこれは競争率の高い職業。なりたい人が多いにも関わらず、実際にその職業に就くのは限られた人のみ。本能的に競争の道を選らんでいるようですね。

一方、女の子の場合は、1位「ケーキ屋・パン屋」、2位「芸能人・歌手・モデル」、3位「花屋」といった具合です。どちらかと人とふれ合う仕事、協調性のある仕事というイメージですね。2位の芸能人はなかなか難しいですが、それ以外は、男性と比べると、比較的、努力次第では念願の職業に就くことが可能です。

社会的地位の高い職業を目指すのは男性の本能かもしれませんが、言い換えると、多くの人が実際にはその職業に就くことができず「夢破れた状態」になっているとも言えます。

原因は「プライド」ではなく「見栄」

田中さんは、こういった人たちにはある共通点があると自著のなかで語っています。それは、「見栄」。プライドではありません。「見栄」です。

「見栄とは、人の目を過剰に気にして、うわべだけ取り繕おうとする態度のことです。見栄の特徴は、いつまでたっても他人との比較から抜け出せない点にあります。しかも、競争に勝ちたいわけですから、見栄っぱりの男性は、他人を見下した態度を取るようになります。蔑みが止まりません」(同書より)

確かに……、自身の経験を振り返っても、女性より男性の方がこの手のタイプが多い。偉そうにふんぞり返っている人ほどこのタイプ。見栄っぱり男性同士が出会ってしまうと悲劇が起こります。

電車内や駅構内でやれ肩がぶつかった、やれカバンがぶつかっただのとトラブルになっているのは、決まって男性。見栄をはることで、暴力事件にでもなってしまえば大変です。つまらないことで喧嘩になってしまう。これもまた生きにくさの一つではないでしょうか。