産育休ママにも通じる?どこか“引け目”のある毎日
樋口:よく「家事をお金に換算するといくらになるから、だから尊い仕事なんですよ」というような言われ方がしますよね、それは、本当にその通りだと思うんですよ。
でも“引け目”を感じちゃう。なんなんですかね、アレは。
男が会社で働くとか、いまの社会形態なんてこの100年の話でしょう?
男が家の中で、以前は女性がやるとされていた仕事を担当して、女性が代わりに働きに出る、全然いいじゃん?経済的に不自由なく過ごせるくらい、女性が稼いでくれれば困らないじゃん?
それはそうなんですけど。
仕事をするとね、いつもはフニャフニャ~ッとしている感じが、自分の中で一本、芯が通るみたいな感じがするんですよ。背筋が伸びるっていうかね。
自分は割と、気持ち的には内向型というか引きこもりタイプなんで、独身時代に24時間小説を書いて、好きな時間に起きて、好きな時間に寝て、好きなだけ仕事ができた時は、何日だって誰とも話さなくても、連絡なんて取らなくても、まるで苦ではなかったんですよね。
でも、そんな自分でも、家事と育児だけだと、アイデンティティが、保てなかった。
自分の時間ができてからやっと「自尊心が保てない」ってことに気付いて。
でも引退宣言の時にツイッターも勢いでやめちゃったから、気付いた時には社会とのつながりも、かなり絶たれてしまっていたという・・・
それぞれの性格にもよると思いますが、産後の女性の気持ちや、置かれている状況にも、通じるんじゃないかなぁ。
たとえ本人が「私は育児を専業ですることに、まったく疑問を持っていません」というタイプだったとしても、あるいは「赤ちゃんと二人きりの生活で精いっぱい、充実しているからもう仕事なんてしなくていい」と言い出したとしても、どこかでアイデンティティが崩れ始めていることが、あるかもしれない。そんな風に、思うんですよねぇ。
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樋口さんの“断筆宣言”から復帰までの流れは、文学ファンの間でも「なんで?」と疑問視されてきましたが、背景に産後専業主夫の“アイデンティティクライシス”があったとは!
赤ちゃんとの生活が幸せで、やりがいもある一方で、知らず知らず自分を見失い、自ら社会とのつながりを断つことすら良しとしてしまった樋口さんに、自身を重ねる産休・育休ママも多いかもしれません。
男とは?女とは?夫婦とは?家族とは?
そんな思いが錯綜する新刊『東京パパ友ラブストーリー』発売に合わせてお送りしてきた作者・樋口毅宏さんインタビュー全3回、いかがだったでしょうか。
これからもワンオペ主夫作家ならではの悲喜こもごもなストーリー、あるいは読み応えたっぷり本格ハードボイルド小説に期待しましょう!