©あべゆみこ

読むのがしんどい「おおきなかぶ」

「おおきなかぶ」も大人にとってはちょっと読むのがしんどい話。ぺージをめくってもめくっても登場する人や動物が変わるだけで文章はほぼ同じだからです

大きなカブがありました。
お爺さんがやってきてカブを引っ張りました。
うんとこしょ、どっこいしょ
ところが、カブは抜けません。

お婆さんがやってきました。
お爺さんとお婆さんでカブを引っ張りました。
うんとこしょ、どっこいしょ
ところが、カブは抜けません

男の子がやってきました。
お爺さん、お婆さん、男の子でカブを引っ張りました。
うんとこしょ、どっこいしょ
ところが、カブは抜けません

(中略※女の子、犬、猫、と続けて出てきて同じ文章の繰り返しです。)

最後に鼠がやってきました。
お爺さんとお婆さんと男の子と女の子と犬と猫と鼠でカブを引っ張りました。
うんとこしょ、どっこいしょ
ようやくカブは抜けました。

『おおきなかぶ』

ママは「ああ、同じ文章を読むのはしんどいなあ」となってしまい、つい「畑にカブがありました。みんなで力を合わせたら抜けました」と一気にまとめてしまいたくなります。でも、これでは子どもは怒ります。

言葉を覚えるための繰り返し

実は子どもには“反復好きな脳”があるので同じ話を繰り返し読み、聞くことで、“言葉”を覚えていっているのです。

同じ文章を読んでもらうことにより、絵本の中の日本語を獲得していきます。繰り返すことで、たくさんの言葉が身に付いていきます。子どもの言葉が増えるのは、この「繰り返し」に秘密があったのですね。

日常生活の中で「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」などの貧弱なシンプルセンテンスしか話しかけていなくても、絵本で繰り返し読んでもらった言葉は子ども自身の母国語になりこんな風に話せるようになります。

  • 「○○ちゃんのママは一体どこへお出かけするんだろう」(→桃太郎の言葉を覚えて使っている)
  • 「ようやくご飯を食べることが出来た」(→『おおきなかぶ』より)

いない、いないばあ

0歳の赤ちゃんは「いない、いない、ばあ!」とやってみせると笑います。しかも、何度やっても笑います。次に出てくる顔がわかっていても笑います。

また、伝い歩きを始めた赤ちゃんは、転んでも、倒れそうになりながらも、何度も、何度も立ち上がり歩こうと果敢に挑戦します。

「もう、繰り返すのは飽きた。歩く練習は止めよう」という赤ちゃんはいません。歩けるようになるまで一生懸命です。こうして、子どもは、「繰り返し同じ行動をする」ことで、失敗し、やり直し、そして成長していきます。

繰り返しを好むのは子どもの本能なのかもしれません。繰り返しが嫌いな大人が同じ絵本を読んでやるのはちょっと面倒かもしれませんが、「子どもの語彙が増える」と考えて、トコトン付き合ってあげましょう。