育てにくい子ほど伸びしろがある
子どものなかには、遺伝的なことが原因で、どうしても親が「育てにくい」と感じてしまう子どももいます。
他の子どもなら気にならないことが気になったり、嫌がったりする子どもを持つと、大らかでのびのびした子どもだったらよかったと思ってしまうかもしれませんが、ご安心ください。
本書に載っているデータによると、「遺伝的に脆弱な性格傾向を持つ子ども」つまり育てにくい子どもほど、ポジティブな環境で育てられると、ある時を境に、性格傾向は大きく良い方向に変容するのだそうです。
もちろん、ネガティブな環境ではそうなりませんから、環境を支配する親の影響力をあらためて感じます。
すぐキレる問題児だったA君のケース
小学校4年生のA君のケースをご紹介しましょう。
A君はいわゆる“問題児”。学校では低学年の頃から、授業中に教室を歩き回ったり、クラスメイトに手を上げたりするような言動が目立ちました。宿題をしてこないことや忘れ物も多く、困ったご両親はなんとか問題を解決しようと、家ではかなり厳しくA君を管理しようとしていました。
学校から帰ってきたらまず、うがい、手洗い。その後、おやつを食べさせ、お母さんがランドセルをチェック、その日の宿題を出して一緒に机の前に座ります。
宿題が終わるまではゲームは禁止なのですが、A君が集中できずにだらけてしまうと、厳しく叱ります。宿題が終わってやっとお母さんは夕飯づくりにとりかかります。
宿題が終われば、寝る時間までゲームしてもOK。
この調子では、就寝時間が遅くなるのは、目に見えていますね。その上、朝はA君が起きるまで起こさずに寝かせておき、学校に行く準備はお母さんがA君の代わりにするのだそうです。
その後、A君の問題行動はよくなるどころか、ますますひどくなり、家でもキレて、食器や家具を投げるようにまでなってしまいました。
ところが、成田さんと上岡さんが、A君のご両親にあることをお願いしたところ、A君に変化が表れ始めました。
成田さんたちのアドバイスは…
成田さんたちのしたアドバイスは、以下の2つだけ。
「21時までに寝ること」と、「夕食の開始時刻は毎日19時にすること」。
あまりにシンプルな提案なので、A君も抵抗することなく受け入れてくれたそうです。
さらに両親には、時々、夕食の支度ができない事情をつくり、A君に助けてもらうようにしてもらいました。A君が手伝ってくれたら「ありがとう」も忘れずに。また、お父さんには夕食の時間に間に合う時は早めに帰宅して、家族一緒の時間を持つようにお願いしました。
すると、A君の行動にだんだん自主性が出てきました。お母さんも前ほどA君につきっきりではありません。21時までに寝るためにはいつゲームをやめればいいか、自分で考えるようになったといいます。
大学生になった現在、A君は、自分のやりたいことをみつけて、それに向かって邁進しているそうです。
A君のケースは、育てにくい子どもへの接し方をご両親が180度変えた結果、良い方向に変容した好例です。
子どもの困った行動を目の前にすると、つい、管理したり、抑止しようとする気持ちになってしまう気持ちもわかりますが、まず、「からだの脳」を育て直す意味で生活面を正すことから始めれば、希望が見えてくるかもしれません。
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子どもの持って生まれた性格や性質にこだわることをやめたら、子育てがもっと楽しく、毎日をゆったり過ごせるようになるのではないでしょうか。
子どもは可能性のかたまり。親は基本的な生活のリズムを守って、つかず離れず見守るというスタンスがいいのかもしれませんね。