ダイエットは苦しいもの。特に年齢を重ねる度に痩せにくくなるし、続けていると辛くなる。ダイエットがうまくいって、一度痩せられたとしても、リバウンドが怖い。……こんな繰り返しで心は思いのほか傷つけられているのです。

これ以上心をすり減らすことなく、「幸せに痩せる」にはどうしたらいいのか。摂食障害の専門医としても活躍されている、精神科医・医学博士の水島広子さんの著書『「幸せにやせたい人」の心の教科書』から、正しい痩せ方のヒントをご紹介します。

ダイエットとは、身体によいことをすること

ダイエットを始めようとした時、あなたは自分の体形について、「もっと足を細くしたい」「ウエストのラインを絞りたい」などの願望をかなえるために行おうとしていませんか?

しかし、それでは食事を減らすことだけに焦点を置いてしまったり、一日に何度も体重計に乗ったり……、「もっと」という要求がいつまでも続き、これでは心がすり減ってしまいます。

まず大切なのは、「体形」ではなく、「体質」に焦点を置くこと。そのためには、食事を減らすのではなく、「身体によいものを食べる」ようになり、さらに無理に運動を続けるのではなく、「自分に合った運動量を見極める」ようになります。

このくらいはしないといけないという気持ちは「とらわれ」と言います。「ダイエットをしている自分が怖くなってやめた」という人は多く、その時の「怖い」という感覚が、自分が自分でなくなっていくような「とらわれ」ていく感覚なのです。

ダイエットとは、身体によいことしなければまず続きません。

「痩せたがり」のダイエットは成功しない

ダイエット特集を扱う雑誌のタイトルなどにはよく、「今度こそ」「楽して」という言葉がよく使われています。これは、ダイエットは決して簡単で楽なものではないということ。短期的なダイエットを行い痩せられた成功者はたくさんいます。それまで制限なく食べていた人が食べる量を減らせば、当然のごとく痩せていきます。

しかし、その食事制限をやめてしまえば、すぐに元に戻ってしまいますし、さらには、よりぽっちゃりとしたリバウンド状態になってしまう人もいます。リバウンドを経験してしまうと、「意志が弱い」と自責的になってしまう人が多いのです。

「意志が弱い」と自覚した後は、無理にでも強い意志を持とうとしてしまいます。しかし、この「意思」というものが実はやっかいなのです。意思を強くしてしまうことはつまり、「痩せたがり」が強い、ということであり、とらわれて依存症になっていくということと直結してしまいます。

では、どうすればいいのでしょうか。それは、身体本位の「今気持ちいいこと」を続けること。「ここで走っておかなければ太ってしまう」といった「未来の結果」に焦点を置くのではなく、「現在の気持ちよさ」をポイントに身体を動かしてみましょう。自分の意思は今の行動に使うことにしてください。

そうすると「これをしなければ太ってしまう」という思いから、今の身体の状態を見極めて、「30分走ってみよう」や、「今日は少し体調が悪いからウォーキング」にしようと、今の身体の状態が見えてきます。